原価率4割超の素材へのこだわり

昨年開店したラーメン店の中で注目を集めた店を挙げるとしたら、この店は外せないないだろう。その名は「Japanese Soba Noodles 蔦」。昨年1月、ラーメンフリークの間に渋谷区代々木の名店「めじろ」(2004年までは神奈川県藤沢)の二代目が独立するといううわさが駆け巡り、オープン初日から行列ができた。繁盛の理由は話題性だけではない。「TRY認定ラーメン大賞」の「しょうゆ部門」で新人賞を獲得し、その実力を証明。「ラーメンは日本が誇る、日本のそば」という大西祐貴店主に取材した。


ラーメンとそばの枠を超えた 日本の麺文化を 目指す

醤油そば (750円)

醤油そば (750円)
来店者の8割が注文するという「醤油そば」。食べ進むにつれて、次々に“うま味の層”が出現する
Japanese Soba Noodles 蔦
所在地=東京都豊島区巣鴨1─14─1
営業時間=午前11時半~午後2時半、6時~8時、木・日曜日 午前11時半~午後2時半、月曜定休
※ただし材料がなくなり次第終了

Japanese Soba Noodles 蔦のメニューには、〝ラーメン〟の文字がない。メニューには「醤油そば」「塩そば」など〝そば〟の文字が並ぶ。店名も「Japanese Soba Noodles」と〝そば〟にこだわる。「ラーメン=中華そばという既成のイメージを変えたいんです。ラーメンも日本のそばのひとつ。ラーメンと日本そばのカテゴリーをなくしたいというのが、僕が目指していることです」
大西氏の会話の中には「日々勉強」という言葉がしばしば登場する。新しい食材との出合いを求めて展示会に足を運び、頭の中に描いたレシピに落とし込むために試作を繰り返す。目指す味と少しでも違えば、微妙な修正を何度でも加える。「片時もラーメンのことが頭から離れませんね。今も考えています」とこだわりは並大抵ではない。その試行錯誤は、すべて大西氏がイメージする〝うま味の層〟を広げることに集約されていく。
「食べ始めから食べ終わりまでうま味の層がある。スープの温度が変化するに従って、いろんな素材が顔を出し、異なったうま味が味わえる〝分厚いラーメン〟を作ること。それが自分の仕事だと思っています」
うま味の層を広げるために、同店ではがらは使わず丸鶏だけを使用。「がらはグルタミン酸だけでうま味が少ない。丸鶏はグルタミン酸に加えてイノシン酸が豊富だからうま味が強いんです」というのが理由だ。スープは開店1年ですでに30回以上替えている。丸鶏だけを使うようになったのも「今月から」というから、その研究熱心さがうかがえる。
さらに加えて、スープには乾物類の他、生のアサリと白身魚の切り身を入れる。魚もアラは使わず、食べられる部分を使用するのがこだわりだ。「だから減価率が4割を超えちゃって」と言うが、材料を無駄なく使い切ることで価格を安定させている。
Japanese Soba Noodles 蔦のホームページの冒頭にこんな言葉がある。「今は地上に生える草でもいつかは空を翔ける鳥のように」。店名「蔦」の由来だ。開店後1年たち、都内有数の行列店になった今でも「味作りにゴールはない」と真摯にラーメンと向き合う大西氏が、ラーメンとそばの境目のない大空を飛翔する勇姿が目に浮かぶようだ。


土・日は遠方からも集客する 〝わざわざ食べに行きたい店〟

人気もまばらな裏通りの住宅立地。行列だけがひときわ目立つ

人気もまばらな裏通りの住宅立地。行列だけがひときわ目立つ
開店は2012年1月。開店初日から店外に約40人が並ぶ盛況ぶり。店舗立地はJR・巣鴨駅南口から徒歩約2分。駅前ロータリーから1本通りを入った位置にある。11坪弱・9席。客層は、平日は男性会社員がメーン。土・日は家族連れや同店の評判を聞きつけた、いわゆるラーメンフリークと呼ばれる人たちで賑わう。常連客も多く「毎日、来店してくださるお客さんもいらっしゃいます。『きょうは、ここをちょっといじってみたんですよ』とお話しすると『またおいしくなったね』と言ってくださり、ありがたいと思っています」。確かに毎日食べても、食べ飽きない味だ。来店者数は昼80~90人、夜50~60人。9席なので、昼間は10回転近くする計算になる。現在の看板メニューは「醤油そば」と「塩そば」。どちらも大西氏が徹底的に素材にこだわった入魂のスープを使用。研究と試作を繰り返し、スープも麺も進化が続く。


丸鶏、天然アサリ、白身魚の切り身など 素材を惜しまない極上スープ

塩そば (750円)

塩そば (750円)
天然物のアサリと白身魚のだしが効いている。ゲランド海塩とモンゴル産の岩塩を使用。仕上げに鶏油と酸度0.1%のエキストラヴァージンオリーブオイルをたらす。
スープに、がらは使わず、丸鶏、天然アサリ、白身魚の切り身、羅臼昆布、サンマ干し、煮干し、淡色野菜を使用。白身魚の種類については「内緒」とのこと。約5時間、弱火で丁寧炊き、1~2晩寝かせてうま味の厚さを出す。「それぞれの素材の持ち味の相乗効果は無限。それをひとつにまとめるのが仕事です」
醤油そばのたれは、小豆島古式天然醸造の火を入れていない生揚げ醤油をメーンに、和歌山県と茨城県の木桶仕込み生揚げ醤油、愛知県の溜まり醤油を使用。塩そばのたれは、フランスのゲランドの海塩と内モンゴルの岩塩をブレンドし、アサリと白身魚のだしが効いている。仕上げに鶏油に加えて、スペイン産のエキストラヴァージン・オリーブオイルを5㏄弱たらす。「酸度0・1%のオリーブオイルでフレッシュ感が抜群。展示会で見つけたときに、これだ!と一目ぼれしました。鶏油だけだと重くなるところを、このオイルを1~2滴加えるだけで軟らかくなるんです」(大西店主)と言う。
麺は北海道産強力粉と栃木県産中力粉に長野県産の石臼びきの全粒粉を使用。石臼でひくと熱が入らないので、全粒粉の香りの立ち方に違いが出る。かん水はリン酸塩の入っていない内モンゴルのかん水。「リン酸塩が入っているとミネラル分が損なわれますから。モンゴルかん水は扱いにくくて、最初は苦労しましたけどね」とすべての素材に妥協がない。粉類の配合については、常に調整を繰り返している。加水率も同様。現在は35%だが、研究成果次第で変化する。
焼き豚は醤油ベースのたれに2日間マリネし、低温ロース地でうま味を閉じ込めた肩ロース焼き豚と、高温と低温で香ばしくローストした豚ばら焼き豚の2種類。メンマは醤油だれと鶏スープで味付けし、コリコリとした食感……など、こだわりはまだまだ続く。


IO(イオ)

Japanese Soba Noodles 蔦の愛用食材・機械 IO(イオ)

輸入元=(株)イスコ
神奈川県川崎市多摩区登戸新町4
TEL 044・934・2541/FAX 044・932・3211
選び抜かれたオリーブのみを手もみで収穫し、3時間以内に搾油。青リンゴのようなフレッシュ感とバナナやアーモンドの風味を併せ持つ。オリーブオイルは酸度0.8以下のものでないとエクストラヴァージンと称することはできないが、これは世界でも数少ない酸度0.1%の逸品。絞りたてのオリーブのさわやかさが特徴。製品には1本1本に製造番号が付けられており、作り手の製品への思いと責任が感じられる。

規格=500ml 5,250円(税込み)


大西 裕貴(おおにし・ゆうき)

大西 裕貴(おおにし・ゆうき)

アパレル業界から転職、そして独立へ
1979年神奈川県藤沢市生まれ。高校卒業とほぼ同時期に、父親が藤沢でラーメン店「めじろ」をオープン。同店で4年間働くが「このままラーメン屋を自分の仕事にすることに納得がいかず」アパレル業界に転職。バイヤーとしてニューヨーク、ロサンゼルス、ラスベガスなどを頻繁に訪れ、日本と米国の食文化の違いにカルチャーショックを受ける。
アパレル業界に5年間在職したのち、めじろに戻る。「海外に行ったことで、日本の食文化の素晴らしさを再認識しました。世界に通用する日本の食文化って、何だろうと考えたとき、やはりそれはラーメンしかないと思いましたね」と、自分の味を一から作り始める。約3年の修業後、2012年1月に独立。独立前からブログなどで話題を呼び、現在に至るまで行列が耐えない。

adminラーメントレンド原価率4割超の素材へのこだわり 昨年開店したラーメン店の中で注目を集めた店を挙げるとしたら、この店は外せないないだろう。その名は「Japanese Soba Noodles 蔦」。昨年1月、ラーメンフリークの間に渋谷区代々木の名店「めじろ」(2004年までは神奈川県藤沢)の二代目が独立するといううわさが駆け巡り、オープン初日から行列ができた。繁盛の理由は話題性だけではない。「TRY認定ラーメン大賞」の「しょうゆ部門」で新人賞を獲得し、その実力を証明。「ラーメンは日本が誇る、日本のそば」という大西祐貴店主に取材した。 ラーメンとそばの枠を超えた 日本の麺文化を 目指す 醤油そば (750円) 来店者の8割が注文するという「醤油そば」。食べ進むにつれて、次々に“うま味の層”が出現する Japanese Soba Noodles 蔦 所在地=東京都豊島区巣鴨1─14─1 営業時間=午前11時半~午後2時半、6時~8時、木・日曜日 午前11時半~午後2時半、月曜定休 ※ただし材料がなくなり次第終了 Japanese Soba Noodles 蔦のメニューには、〝ラーメン〟の文字がない。メニューには「醤油そば」「塩そば」など〝そば〟の文字が並ぶ。店名も「Japanese Soba Noodles」と〝そば〟にこだわる。「ラーメン=中華そばという既成のイメージを変えたいんです。ラーメンも日本のそばのひとつ。ラーメンと日本そばのカテゴリーをなくしたいというのが、僕が目指していることです」 大西氏の会話の中には「日々勉強」という言葉がしばしば登場する。新しい食材との出合いを求めて展示会に足を運び、頭の中に描いたレシピに落とし込むために試作を繰り返す。目指す味と少しでも違えば、微妙な修正を何度でも加える。「片時もラーメンのことが頭から離れませんね。今も考えています」とこだわりは並大抵ではない。その試行錯誤は、すべて大西氏がイメージする〝うま味の層〟を広げることに集約されていく。 「食べ始めから食べ終わりまでうま味の層がある。スープの温度が変化するに従って、いろんな素材が顔を出し、異なったうま味が味わえる〝分厚いラーメン〟を作ること。それが自分の仕事だと思っています」 うま味の層を広げるために、同店ではがらは使わず丸鶏だけを使用。「がらはグルタミン酸だけでうま味が少ない。丸鶏はグルタミン酸に加えてイノシン酸が豊富だからうま味が強いんです」というのが理由だ。スープは開店1年ですでに30回以上替えている。丸鶏だけを使うようになったのも「今月から」というから、その研究熱心さがうかがえる。 さらに加えて、スープには乾物類の他、生のアサリと白身魚の切り身を入れる。魚もアラは使わず、食べられる部分を使用するのがこだわりだ。「だから減価率が4割を超えちゃって」と言うが、材料を無駄なく使い切ることで価格を安定させている。 Japanese Soba Noodles 蔦のホームページの冒頭にこんな言葉がある。「今は地上に生える草でもいつかは空を翔ける鳥のように」。店名「蔦」の由来だ。開店後1年たち、都内有数の行列店になった今でも「味作りにゴールはない」と真摯にラーメンと向き合う大西氏が、ラーメンとそばの境目のない大空を飛翔する勇姿が目に浮かぶようだ。 土・日は遠方からも集客する 〝わざわざ食べに行きたい店〟 人気もまばらな裏通りの住宅立地。行列だけがひときわ目立つ 開店は2012年1月。開店初日から店外に約40人が並ぶ盛況ぶり。店舗立地はJR・巣鴨駅南口から徒歩約2分。駅前ロータリーから1本通りを入った位置にある。11坪弱・9席。客層は、平日は男性会社員がメーン。土・日は家族連れや同店の評判を聞きつけた、いわゆるラーメンフリークと呼ばれる人たちで賑わう。常連客も多く「毎日、来店してくださるお客さんもいらっしゃいます。『きょうは、ここをちょっといじってみたんですよ』とお話しすると『またおいしくなったね』と言ってくださり、ありがたいと思っています」。確かに毎日食べても、食べ飽きない味だ。来店者数は昼80~90人、夜50~60人。9席なので、昼間は10回転近くする計算になる。現在の看板メニューは「醤油そば」と「塩そば」。どちらも大西氏が徹底的に素材にこだわった入魂のスープを使用。研究と試作を繰り返し、スープも麺も進化が続く。 丸鶏、天然アサリ、白身魚の切り身など 素材を惜しまない極上スープ 塩そば (750円) 天然物のアサリと白身魚のだしが効いている。ゲランド海塩とモンゴル産の岩塩を使用。仕上げに鶏油と酸度0.1%のエキストラヴァージンオリーブオイルをたらす。 スープに、がらは使わず、丸鶏、天然アサリ、白身魚の切り身、羅臼昆布、サンマ干し、煮干し、淡色野菜を使用。白身魚の種類については「内緒」とのこと。約5時間、弱火で丁寧炊き、1~2晩寝かせてうま味の厚さを出す。「それぞれの素材の持ち味の相乗効果は無限。それをひとつにまとめるのが仕事です」 醤油そばのたれは、小豆島古式天然醸造の火を入れていない生揚げ醤油をメーンに、和歌山県と茨城県の木桶仕込み生揚げ醤油、愛知県の溜まり醤油を使用。塩そばのたれは、フランスのゲランドの海塩と内モンゴルの岩塩をブレンドし、アサリと白身魚のだしが効いている。仕上げに鶏油に加えて、スペイン産のエキストラヴァージン・オリーブオイルを5㏄弱たらす。「酸度0・1%のオリーブオイルでフレッシュ感が抜群。展示会で見つけたときに、これだ!と一目ぼれしました。鶏油だけだと重くなるところを、このオイルを1~2滴加えるだけで軟らかくなるんです」(大西店主)と言う。 麺は北海道産強力粉と栃木県産中力粉に長野県産の石臼びきの全粒粉を使用。石臼でひくと熱が入らないので、全粒粉の香りの立ち方に違いが出る。かん水はリン酸塩の入っていない内モンゴルのかん水。「リン酸塩が入っているとミネラル分が損なわれますから。モンゴルかん水は扱いにくくて、最初は苦労しましたけどね」とすべての素材に妥協がない。粉類の配合については、常に調整を繰り返している。加水率も同様。現在は35%だが、研究成果次第で変化する。 焼き豚は醤油ベースのたれに2日間マリネし、低温ロース地でうま味を閉じ込めた肩ロース焼き豚と、高温と低温で香ばしくローストした豚ばら焼き豚の2種類。メンマは醤油だれと鶏スープで味付けし、コリコリとした食感……など、こだわりはまだまだ続く。 Japanese Soba Noodles 蔦の愛用食材・機械 IO(イオ) 輸入元=(株)イスコ 神奈川県川崎市多摩区登戸新町4 TEL 044・934・2541/FAX 044・932・3211 選び抜かれたオリーブのみを手もみで収穫し、3時間以内に搾油。青リンゴのようなフレッシュ感とバナナやアーモンドの風味を併せ持つ。オリーブオイルは酸度0.8以下のものでないとエクストラヴァージンと称することはできないが、これは世界でも数少ない酸度0.1%の逸品。絞りたてのオリーブのさわやかさが特徴。製品には1本1本に製造番号が付けられており、作り手の製品への思いと責任が感じられる。 規格=500ml 5,250円(税込み) 大西 裕貴(おおにし・ゆうき) アパレル業界から転職、そして独立へ 1979年神奈川県藤沢市生まれ。高校卒業とほぼ同時期に、父親が藤沢でラーメン店「めじろ」をオープン。同店で4年間働くが「このままラーメン屋を自分の仕事にすることに納得がいかず」アパレル業界に転職。バイヤーとしてニューヨーク、ロサンゼルス、ラスベガスなどを頻繁に訪れ、日本と米国の食文化の違いにカルチャーショックを受ける。 アパレル業界に5年間在職したのち、めじろに戻る。「海外に行ったことで、日本の食文化の素晴らしさを再認識しました。世界に通用する日本の食文化って、何だろうと考えたとき、やはりそれはラーメンしかないと思いましたね」と、自分の味を一から作り始める。約3年の修業後、2012年1月に独立。独立前からブログなどで話題を呼び、現在に至るまで行列が耐えない。あたらしい視点でラーメンを伝える情報誌!