日本の“うま味”をつけ麺で啓蒙

カリフォルニア州ロサンゼルスで今、ラーメンが熱い! 現地の和食店や中華店が従来提供してきた清湯系、いわゆる「中華そば」とは異なる、日本独特の豚骨ラーメン専門店が、ここ2~3年急増しているのだ。その数は300店を超え、LAトレンドの象徴と化している。中でもひと際、精彩を放っているのが、ハリウッドにある「IKEMEN THE DIP RAMEN HOLLYWOOD」。通称“イケメン”だ。その話題のイケメンが4月24日、日本初の“逆輸入ラーメン”として「新横浜ラーメン博物館」に出店する。同店社長・川端康正氏の意気込みを追った。


LAトレンドはクラブ帰りのラーメン締め Johnny Dip(10$)

LAトレンドはクラブ帰りのラーメン締め Johnny Dip(10$)

イケメンの一番人気。豚骨ベースのスープ(つけ汁)にエシャロット、トマト、バジルソースをミックスしたイタリアンテイストのつけ麺。俳優のジョニー・デップがアカデミー賞の帰りに本品を食べて感激した、という夢を見て命名
川端氏が日本食を米国に紹介したいという志を抱いたのは、今から約20年前、高校卒業後、オレゴン州に留学したときまでさかのぼる。
「当時、オレゴンにあった日本食レストランは、どれも日本の味とは程遠い。照り焼きチキンはチキンソテーに醤油と砂糖を絡めただけだし、寿司はグジュグジュのネタがのった酢飯に醤油を浴びるほど付けて食べる。でも、アメリカ人はこれが日本料理だと思って食べているんです。日本人として、これは許せないと思いましたね。日本食はもっと繊細な味なのにって、日本人としてのプライドがうずきました」
帰国後、父親が経営する北九州市小倉にある飲食店で修業。川端氏の働きが功を奏して、月商400万円だった店が1年間で1000万円に増収。その勢いを受けて新店舗をオープンさせ、開店後わずか2ヵ月で月商2400万円を達成させた。
こうなれば、次に目指すのは米国進出しかない。ロサンゼルス・ビバリーヒルズに和食とフレンチのフュージョン店を開店させた。しかし米国の外食産業はそれほど甘くなかった。1年で閉店を余儀なくされ、残ったのは多額の借金だけ。失意のどん底にあった川端氏を救ったのが、店の常連客であり友人だった中村栄利氏。神奈川県海老名の「中村屋」のオーナーで、その独特の湯切りスタイルが「天空落とし」と呼ばれるラーメン界の奇才である。この運命的な出会いによって「子どものころから食べ慣れてきた豚骨ラーメンの店をやりたい」という川端氏の願いが、みるみる実現へと動き出した。
「やるからには“とんがった”ものにしたい」とオンリーワンを目指し、ロサンゼルス初の“つけ麺専門店”かつハリウッド初のラーメン店が誕生した。メニューの提供の仕方にも趣向をこらし、機械で鰹節を削るところを客席から見えるようにして、削りたての大量の鰹節を客席で麺にかける。あるいは、お客さんの目の前で替え玉をバーナーであぶり、麺の食感を変える。このパフォーマンスがウケて、たちまち人気店に。
「18歳の僕が思ったのは、本物の日本食の本当においしさをアメリカ人に知ってほしいということ。そのときは、それが寿司なのか、焼肉なのか、具体的なイメージはありませんでした。でもフレンチフュージョンの店で失敗して、どん底にあった僕を救ってくれたのがラーメンだったわけです。ラーメンの力ってすごい。ラーメンこそが、米国にそして世界に通用する日本が誇る食文化だと、今は確信しています」と川端氏のビジョンは広がる。


“つけ麺”を“DIP”で表現!

「IKEMEN」の店名にふさわしいスタイリッシュな川端康正氏(右端)とスタッフ。

「IKEMEN」の店名にふさわしいスタイリッシュな川端康正氏(右端)とスタッフ。松田優作のファンで黒の帽子は代表作「探偵物語」をまねてとのこと


客層の95%アメリカ人 客単価13$、週末は250人が来店

客層の95%アメリカ人 客単価13$、週末は250人が来店

ハリウッド店は2011年8月オープン。店舗立地はロサンゼルス市ハリウッド地区のブレア通り。エンターテインメント界で活躍した人たちの名前が刻まれた星型プレートが埋め込まれている「ウォーク・オブ・フェイム」が近くにある。
出店費用を抑えるために、閉店した前の店で使っていたフライヤーをゆで麺機に改造。「フライヤーとゆで麺機は熱伝導の仕方が同じことを発見して、自力で作り直しました」と川端氏。
21坪、25席。営業時間は月~木曜日は正午~午後3時、6時~午前0時。金曜日は午後6時~午前4時、土曜日は午後6時~午前2時。「週末の夜中はクラブ帰りの人たちでいっぱいになります。お酒を飲んだあとにラーメンが食べたくなるのは日本人と同じですね」。来店者数は平日約150人、週末は約250人。来店者の滞在時間は約30分。客単価13$。
メニューは「Dip Ramen」(つけ麺)、ラーメンの他、サイドメニューに唐揚げ、揚げギョウザ、たこ焼き、フライドポテト、チャーシュー、サラダなど。スープは豚骨ベース。
ダウンタウン店は2013年1月開店。新横浜ラーメン博物館内に4月24日オープン予定


ハリウッドならではのエンタメ性をアピール ユニークなネーミングで引きつける

IKEMENの主力メニュー

店名とメニュー名には、川端氏のユーモアが光る。店名は、当初「男前ラーメン」が候補にあがったが、アメリカ人は発音しにくく、覚えにくいということから、男前=IKEMEN(イケメン)に。メニュー名もユニークだ。つけ麺の「Johnny Dip」は、映画スターのJohnny Deppから、Dip(浸す、つける)とDeppをもじったもの。小鉢1杯分の削りたての鰹節をお客さんの目の前で麺にかけるパフォーマンスなど、エンターテインメント性にもアイデアを凝らす。削りたての鰹節を使っているのは、アメリカでもおそらく「IKEMEN」だけ。「オンリーワン」を目指す川端氏のスピリットがここにもある。削りたての鰹節は「魚臭くない」とアメリカ人に好評だ。その他のユニークなメニューは別表の通り。


IKEMEN THE DIP RAMEN HOLLYWOOD の愛用食材・機械

「イケメン」に欠かせない食材は、日本のうま味文化を象徴する鰹節。鹿児島県枕崎産の荒節をカウンターに設置した鰹節削機で削り、削りたての鰹節を提供している。
川端社長は「最初は魚粉を使っていましたが、LAでは『フィッシー(魚臭い)』と言って嫌う人もいます。削り立ての鰹節だと、魚臭さが抑制され、万人の味覚にマッチ。しかも、香りとうま味が際立つので、日本食文化の魅力を十分に訴求できます」と説き、「なにより目前で荒節を削るパフォーマンスが大ウケ。繁盛の決め手になりましたね」と明かす。
荒節は、創業メンバーの足立隆氏の実家が営む鰹節卸㈱足立食品から仕入れており、鰹節削機(製造元:ワシオ工業)の販売代理店も同社が兼務している。鰹節と削機のテーブルパフォーマンスは鮮度訴求に最適。イケメンの凱旋で日本でも脚光を浴びそうだ。

小型鰹節削機 SK‐4(ワシオ式)

小型鰹節削機 SK‐4(ワシオ式)

荒節&鰹節削機のパフォーマンスが大ウケ!
足立食品
(東京都練馬区、☎03・3931・1124)

鹿児島県枕崎産荒節

鹿児島県枕崎産荒節

足立食品
(東京都練馬区、☎03・3931・1124)


削りたての鰹節をたっぷりのせた「Bonito Dashi Ramen」(鰹だしラーメン、8$)

「Bonito Dashi Ramen」

削りたての鰹節をたっぷりのせた「Bonito Dashi Ramen」(鰹だしラーメン、8$)


川端 康正(かわばた・やすただ)

川端 康正(かわばた・やすただ)

1974年福岡県北九州市生まれ。高校卒業後、オレゴン州の大学に留学。現地の日本食のレベルの低さにショックを受け、本物の日本食を米国に進出させたいという夢を抱く。帰国後、父親が経営する建設会社の現場監督を3年間務める。しかし飲食業への夢を断ち切れずに、父親がサイドビジネスで経営する飲食店で修業。その後、渡米して、カリフォルニア州ビバリーヒルズに日本食とフレンチをフュージョンさせて店をオープンさせるが、多額の借金を抱えて1年でクローズ。店の常連客だった海老名「中村屋」の中村英利氏、中村屋に鰹節を卸していた「足立食品」の足立隆氏と一緒に、2011年8月、ハリウッドの真ん中に「IKEMEN THE DIP RAMEN HOLLYWOOD」をオープン。今年1月に2号店をダウンタウンに開き、さらに4月24日に新横浜ラーメン博物館に出店。逆輸入ラーメン日本初上陸を達成する。
IKEMEN THE DIP RAMEN HOLLYWOOD
所在地=ハリウッド店・1655 N La Brea Ave. Hollywood,CA 90028、ダウンタウン店・123 S Astronaut Ellison Onizuka St #108 LA,CA 90012、新横浜ラーメン博物館内店(4月24日オープン)・神奈川県横浜市港北区新横浜2─14─21
営業時間=午前10時~午後11時(日によって変動あり)

adminラーメントレンド日本の“うま味”をつけ麺で啓蒙 カリフォルニア州ロサンゼルスで今、ラーメンが熱い! 現地の和食店や中華店が従来提供してきた清湯系、いわゆる「中華そば」とは異なる、日本独特の豚骨ラーメン専門店が、ここ2~3年急増しているのだ。その数は300店を超え、LAトレンドの象徴と化している。中でもひと際、精彩を放っているのが、ハリウッドにある「IKEMEN THE DIP RAMEN HOLLYWOOD」。通称“イケメン”だ。その話題のイケメンが4月24日、日本初の“逆輸入ラーメン”として「新横浜ラーメン博物館」に出店する。同店社長・川端康正氏の意気込みを追った。 LAトレンドはクラブ帰りのラーメン締め Johnny Dip(10$) イケメンの一番人気。豚骨ベースのスープ(つけ汁)にエシャロット、トマト、バジルソースをミックスしたイタリアンテイストのつけ麺。俳優のジョニー・デップがアカデミー賞の帰りに本品を食べて感激した、という夢を見て命名 川端氏が日本食を米国に紹介したいという志を抱いたのは、今から約20年前、高校卒業後、オレゴン州に留学したときまでさかのぼる。 「当時、オレゴンにあった日本食レストランは、どれも日本の味とは程遠い。照り焼きチキンはチキンソテーに醤油と砂糖を絡めただけだし、寿司はグジュグジュのネタがのった酢飯に醤油を浴びるほど付けて食べる。でも、アメリカ人はこれが日本料理だと思って食べているんです。日本人として、これは許せないと思いましたね。日本食はもっと繊細な味なのにって、日本人としてのプライドがうずきました」 帰国後、父親が経営する北九州市小倉にある飲食店で修業。川端氏の働きが功を奏して、月商400万円だった店が1年間で1000万円に増収。その勢いを受けて新店舗をオープンさせ、開店後わずか2ヵ月で月商2400万円を達成させた。 こうなれば、次に目指すのは米国進出しかない。ロサンゼルス・ビバリーヒルズに和食とフレンチのフュージョン店を開店させた。しかし米国の外食産業はそれほど甘くなかった。1年で閉店を余儀なくされ、残ったのは多額の借金だけ。失意のどん底にあった川端氏を救ったのが、店の常連客であり友人だった中村栄利氏。神奈川県海老名の「中村屋」のオーナーで、その独特の湯切りスタイルが「天空落とし」と呼ばれるラーメン界の奇才である。この運命的な出会いによって「子どものころから食べ慣れてきた豚骨ラーメンの店をやりたい」という川端氏の願いが、みるみる実現へと動き出した。 「やるからには“とんがった”ものにしたい」とオンリーワンを目指し、ロサンゼルス初の“つけ麺専門店”かつハリウッド初のラーメン店が誕生した。メニューの提供の仕方にも趣向をこらし、機械で鰹節を削るところを客席から見えるようにして、削りたての大量の鰹節を客席で麺にかける。あるいは、お客さんの目の前で替え玉をバーナーであぶり、麺の食感を変える。このパフォーマンスがウケて、たちまち人気店に。 「18歳の僕が思ったのは、本物の日本食の本当においしさをアメリカ人に知ってほしいということ。そのときは、それが寿司なのか、焼肉なのか、具体的なイメージはありませんでした。でもフレンチフュージョンの店で失敗して、どん底にあった僕を救ってくれたのがラーメンだったわけです。ラーメンの力ってすごい。ラーメンこそが、米国にそして世界に通用する日本が誇る食文化だと、今は確信しています」と川端氏のビジョンは広がる。 “つけ麺”を“DIP”で表現! 「IKEMEN」の店名にふさわしいスタイリッシュな川端康正氏(右端)とスタッフ。松田優作のファンで黒の帽子は代表作「探偵物語」をまねてとのこと 客層の95%アメリカ人 客単価13$、週末は250人が来店 ハリウッド店は2011年8月オープン。店舗立地はロサンゼルス市ハリウッド地区のブレア通り。エンターテインメント界で活躍した人たちの名前が刻まれた星型プレートが埋め込まれている「ウォーク・オブ・フェイム」が近くにある。 出店費用を抑えるために、閉店した前の店で使っていたフライヤーをゆで麺機に改造。「フライヤーとゆで麺機は熱伝導の仕方が同じことを発見して、自力で作り直しました」と川端氏。 21坪、25席。営業時間は月~木曜日は正午~午後3時、6時~午前0時。金曜日は午後6時~午前4時、土曜日は午後6時~午前2時。「週末の夜中はクラブ帰りの人たちでいっぱいになります。お酒を飲んだあとにラーメンが食べたくなるのは日本人と同じですね」。来店者数は平日約150人、週末は約250人。来店者の滞在時間は約30分。客単価13$。 メニューは「Dip Ramen」(つけ麺)、ラーメンの他、サイドメニューに唐揚げ、揚げギョウザ、たこ焼き、フライドポテト、チャーシュー、サラダなど。スープは豚骨ベース。 ダウンタウン店は2013年1月開店。新横浜ラーメン博物館内に4月24日オープン予定 ハリウッドならではのエンタメ性をアピール ユニークなネーミングで引きつける 店名とメニュー名には、川端氏のユーモアが光る。店名は、当初「男前ラーメン」が候補にあがったが、アメリカ人は発音しにくく、覚えにくいということから、男前=IKEMEN(イケメン)に。メニュー名もユニークだ。つけ麺の「Johnny Dip」は、映画スターのJohnny Deppから、Dip(浸す、つける)とDeppをもじったもの。小鉢1杯分の削りたての鰹節をお客さんの目の前で麺にかけるパフォーマンスなど、エンターテインメント性にもアイデアを凝らす。削りたての鰹節を使っているのは、アメリカでもおそらく「IKEMEN」だけ。「オンリーワン」を目指す川端氏のスピリットがここにもある。削りたての鰹節は「魚臭くない」とアメリカ人に好評だ。その他のユニークなメニューは別表の通り。 IKEMEN THE DIP RAMEN HOLLYWOOD の愛用食材・機械 「イケメン」に欠かせない食材は、日本のうま味文化を象徴する鰹節。鹿児島県枕崎産の荒節をカウンターに設置した鰹節削機で削り、削りたての鰹節を提供している。 川端社長は「最初は魚粉を使っていましたが、LAでは『フィッシー(魚臭い)』と言って嫌う人もいます。削り立ての鰹節だと、魚臭さが抑制され、万人の味覚にマッチ。しかも、香りとうま味が際立つので、日本食文化の魅力を十分に訴求できます」と説き、「なにより目前で荒節を削るパフォーマンスが大ウケ。繁盛の決め手になりましたね」と明かす。 荒節は、創業メンバーの足立隆氏の実家が営む鰹節卸㈱足立食品から仕入れており、鰹節削機(製造元:ワシオ工業)の販売代理店も同社が兼務している。鰹節と削機のテーブルパフォーマンスは鮮度訴求に最適。イケメンの凱旋で日本でも脚光を浴びそうだ。 小型鰹節削機 SK‐4(ワシオ式) 荒節&鰹節削機のパフォーマンスが大ウケ! 足立食品 (東京都練馬区、☎03・3931・1124) 鹿児島県枕崎産荒節 足立食品 (東京都練馬区、☎03・3931・1124) 「Bonito Dashi Ramen」 削りたての鰹節をたっぷりのせた「Bonito Dashi Ramen」(鰹だしラーメン、8$) 川端 康正(かわばた・やすただ) 1974年福岡県北九州市生まれ。高校卒業後、オレゴン州の大学に留学。現地の日本食のレベルの低さにショックを受け、本物の日本食を米国に進出させたいという夢を抱く。帰国後、父親が経営する建設会社の現場監督を3年間務める。しかし飲食業への夢を断ち切れずに、父親がサイドビジネスで経営する飲食店で修業。その後、渡米して、カリフォルニア州ビバリーヒルズに日本食とフレンチをフュージョンさせて店をオープンさせるが、多額の借金を抱えて1年でクローズ。店の常連客だった海老名「中村屋」の中村英利氏、中村屋に鰹節を卸していた「足立食品」の足立隆氏と一緒に、2011年8月、ハリウッドの真ん中に「IKEMEN THE DIP RAMEN HOLLYWOOD」をオープン。今年1月に2号店をダウンタウンに開き、さらに4月24日に新横浜ラーメン博物館に出店。逆輸入ラーメン日本初上陸を達成する。 IKEMEN THE DIP RAMEN HOLLYWOOD 所在地=ハリウッド店・1655 N La Brea Ave. Hollywood,CA 90028、ダウンタウン店・123 S Astronaut Ellison Onizuka St #108 LA,CA 90012、新横浜ラーメン博物館内店(4月24日オープン)・神奈川県横浜市港北区新横浜2─14─21 営業時間=午前10時~午後11時(日によって変動あり)あたらしい視点でラーメンを伝える情報誌!