伝統の煮干しに豚骨の厚みを加味 とんこつ煮干しそば (600円)

伝統の煮干しに豚骨の厚みを加味 とんこつ煮干しそば (600円)

煮干しスープが主流の青森で「豚骨煮干しスープ」という新潮流が巻き起こっている。その象徴が“青森中華そばの進化形”を掲げる「ひらこ屋」だ(青森ではラーメンを中華そばと呼ぶ)。三上玲店主(38歳)は、郷土の味覚を尊重しつつ独自の味づくりを追求。伝統と強烈な個性を融和させ老若男女を問わず支持を広げている。
豚骨煮干しスープは、煮干しスープと豚骨スープを合わせてダブルスープとし、さらに煮干しを加えて炊き上げた、濃厚な味と香りが自慢。煮干しスープは、煮干しを2日間ほど水に寝かせた冷清湯。豚骨スープは豚骨を約15時間炊いた白湯。煮干しの使用量はラーメン1杯(スープ400㏄)あたり100g強になるという。
煮干しは、境港産の真イワシを主力にカタクチやウルメなど数種類。季節により産地と魚種が変化する。それに鰹節、鯖節、焼き節、昆布などを加えて味を調整している。また、苦味や臭みが出ないよう、煮干しの頭とハラワタはすべて除去。それらはアクセントを演出する隠し味として、スープの仕上げに少量加えられる。
開業は2004年。それまで三上店主は、サンマ節スープを看板に「雷門」という店を手がけていたが、サンマ節の製造会社が廃業したため閉店。かねて構想していた豚骨煮干しスープを開発し、立地をあらため出直した。
三上店主は、「青森のスープは本来、煮干しメーンが主流ですが、豚骨や鶏がらなどの動物性原料を加え、厚みとコクを演出しました」と語り、「豚骨煮干しという新分野に挑戦し、日々試行錯誤しながら味を深化させてます」と説く。
開業から1年間は苦戦したが、2年目から着実にファンを積み重ね、現在は月商400~450万円。近年は各地に模倣店が現れるなど、豚骨煮干しスープの先鋭として存在感を強めている。
三上店主は「自家製麺を使っていても原価率は40%弱。仕込みの手間は、おそらく普通の店の倍以上。客単価も600円強ですから、それほどもうかりませんよ」と苦笑いし、「でも、自分の味づくりを追求できて、地元青森のお客さんに喜んでもらえれば十分です」と言う。


中華そば ひらこ屋

中華そば ひらこ屋

所在地=青森県青森市新城字山田588─16
営業時間=午前10時30分~午後9時

豚骨スープと煮干しスープを合わせ、さらに煮干しを加えて炊き上げる。「手間もコストも妥協なし」と三上玲店主


煮干しそば (500円)

煮干しそば (500円)

青森独特の煮干しスープをさらに洗練。あっさり嗜好の高齢者や女性から人気


初期投資100万円強で開業 のれん分け目指し人材育成

スープ1杯分の煮干し100g強。真イワシをメーンに数種類ミックス

スープ1杯分の煮干し100g強。真イワシをメーンに数種類ミックス
開業は2004年。店舗立地は青森市街から約5㎞、新青森駅から約1㎞の郊外国道沿い。居抜き出店・初期投資100万円強、16坪・20席の小規模店舗を三上店主の他、従業員4人で運営している。
客層は、ほぼ100%地元常連客で、老若男女を問わず男女比は6対4。集客数は平日約200人、土・日・祝日約300人。正午をはさむ3時間は常に満席で、来店客はラーメンを注文してから駐車場の車内で呼ばれるのを待つ。
メニューは、「とんこつ煮干しそば」(600円)注文構成比40%、「煮干しそば」(500円)同30%、「背脂中華そば」(600円)同10%、「バラそば」(750円)10%の4種類。地元客は、それぞれ「こいくち」「あっさり」「せあぶら」「バラ」の愛称で注文する。
サイドメニューは、「煮卵」(100円)、「チャーシュー(煮豚)」(100円)、「ライス」(100円)のみ。
いまや青森中華そばの有名店に台頭。出店誘致も相次いでいるが、「自分が常駐できない店で“ひらこ屋”の看板を掲げたくない」(三上社長)との理由で、すべて辞退。代わりに店で働く若手がのれん分けで独立できるよう、人材育成に努めている。


煮干し使用量1日20~30㎏ ベースは境港産の真イワシ

煮干し使用量1日20~30㎏ ベースは境港産の真イワシ

毎朝4時から当日分の麺を製麺。製麺屋から仕入れた方が効率的かつ割安だが、手間を惜しまず独自の味づくりにこだわる
スープの基本となるのが煮干しスープ。丸2日間、じっくり煮出した煮干しスープベースと豚骨白湯スープを同割で合わせ、さらに当日早朝、煮干しを加えて炊き出し、「とんこつ煮干しそば」のスープとする。豚骨白湯と割らず、煮干しだけ追い足しして炊き上げたスープが、「煮干しそば」のスープとなる。
煮干しは、境港産の真イワシをベースに、旬に合った数種類の煮干し・節を加味。原料の使用量は1日に20~30㎏。すべて頭、ハラワタ、血合いを取り除くため、その手間だけで原料1㎏につき1人約1時間ほどかかるという。
麺は、かんすい控えめの自家製麺、太ストレート190g(大280g)。小麦粉の風味が生き、スープの味にキレが出る、道産小麦「春よ来い」の2等粉を愛用している。チャーシューは、青森ガーリックポークの煮豚を約2㎜厚(盤形約10㎝)にカットして3枚トッピング。メンマは自家製調味して約3㎜厚にカットしたもの。
「具材(形状)はすべて昔ながらの地元嗜好に合わせています」(三上社長)と言う。


マルキンこいくちしょうゆ(マルキン忠勇)

ひらこ屋の愛用食材

マルキンこいくちしょうゆ(マルキン忠勇)
規格=1斗缶
香川県小豆島、瀬戸内の醤油造りの伝統が息づく濃い口醤油。芳醇な香り、まろやかな風味、深いコクが特徴。三上店主は「香りとコクの立ち具合がよく、煮干しスープとの相性が抜群。さすが讃岐うどんを支える地場醤油だと思います」と語り、「これにキッコーマン濃い口醤油を少量配合して醤油たれ(かえし)にします」と言う。


三上玲(みかみ・れい)

三上玲(みかみ・れい)

1974年青森市生まれ。幼少時、母親が勤めていた食堂に通い、青森中華そばに食べなじむが、かんすい臭が苦手だったため、中華そばから遠ざかる。ガス会社に勤めていた20歳の頃、友人の誘いで食べた人気店の中華そばを食べ、幼少時の覚えと違うスープの複雑さに感銘。以来、大衆を引きつける中華そばの奥深さに魅了され、自分の味づくりを決意。市内の大型店で3年間の修業後、02年「めんや雷門」を開業。サンマ干しスープを売りに繁盛したが、サンマ干し業者(PB依頼)の廃業と店舗老朽化が重なり閉店。かねて構想を練っていた豚骨煮干しスープを開発し、05年「ひらこ屋」開業。08年、姉妹店「麺屋らいぞう」開業。青森中華そばの新潮流として脚光を浴びている。

adminラーメントレンド伝統の煮干しに豚骨の厚みを加味 とんこつ煮干しそば (600円) 煮干しスープが主流の青森で「豚骨煮干しスープ」という新潮流が巻き起こっている。その象徴が“青森中華そばの進化形”を掲げる「ひらこ屋」だ(青森ではラーメンを中華そばと呼ぶ)。三上玲店主(38歳)は、郷土の味覚を尊重しつつ独自の味づくりを追求。伝統と強烈な個性を融和させ老若男女を問わず支持を広げている。 豚骨煮干しスープは、煮干しスープと豚骨スープを合わせてダブルスープとし、さらに煮干しを加えて炊き上げた、濃厚な味と香りが自慢。煮干しスープは、煮干しを2日間ほど水に寝かせた冷清湯。豚骨スープは豚骨を約15時間炊いた白湯。煮干しの使用量はラーメン1杯(スープ400㏄)あたり100g強になるという。 煮干しは、境港産の真イワシを主力にカタクチやウルメなど数種類。季節により産地と魚種が変化する。それに鰹節、鯖節、焼き節、昆布などを加えて味を調整している。また、苦味や臭みが出ないよう、煮干しの頭とハラワタはすべて除去。それらはアクセントを演出する隠し味として、スープの仕上げに少量加えられる。 開業は2004年。それまで三上店主は、サンマ節スープを看板に「雷門」という店を手がけていたが、サンマ節の製造会社が廃業したため閉店。かねて構想していた豚骨煮干しスープを開発し、立地をあらため出直した。 三上店主は、「青森のスープは本来、煮干しメーンが主流ですが、豚骨や鶏がらなどの動物性原料を加え、厚みとコクを演出しました」と語り、「豚骨煮干しという新分野に挑戦し、日々試行錯誤しながら味を深化させてます」と説く。 開業から1年間は苦戦したが、2年目から着実にファンを積み重ね、現在は月商400~450万円。近年は各地に模倣店が現れるなど、豚骨煮干しスープの先鋭として存在感を強めている。 三上店主は「自家製麺を使っていても原価率は40%弱。仕込みの手間は、おそらく普通の店の倍以上。客単価も600円強ですから、それほどもうかりませんよ」と苦笑いし、「でも、自分の味づくりを追求できて、地元青森のお客さんに喜んでもらえれば十分です」と言う。 中華そば ひらこ屋 所在地=青森県青森市新城字山田588─16 営業時間=午前10時30分~午後9時 豚骨スープと煮干しスープを合わせ、さらに煮干しを加えて炊き上げる。「手間もコストも妥協なし」と三上玲店主 煮干しそば (500円) 青森独特の煮干しスープをさらに洗練。あっさり嗜好の高齢者や女性から人気 初期投資100万円強で開業 のれん分け目指し人材育成 スープ1杯分の煮干し100g強。真イワシをメーンに数種類ミックス 開業は2004年。店舗立地は青森市街から約5㎞、新青森駅から約1㎞の郊外国道沿い。居抜き出店・初期投資100万円強、16坪・20席の小規模店舗を三上店主の他、従業員4人で運営している。 客層は、ほぼ100%地元常連客で、老若男女を問わず男女比は6対4。集客数は平日約200人、土・日・祝日約300人。正午をはさむ3時間は常に満席で、来店客はラーメンを注文してから駐車場の車内で呼ばれるのを待つ。 メニューは、「とんこつ煮干しそば」(600円)注文構成比40%、「煮干しそば」(500円)同30%、「背脂中華そば」(600円)同10%、「バラそば」(750円)10%の4種類。地元客は、それぞれ「こいくち」「あっさり」「せあぶら」「バラ」の愛称で注文する。 サイドメニューは、「煮卵」(100円)、「チャーシュー(煮豚)」(100円)、「ライス」(100円)のみ。 いまや青森中華そばの有名店に台頭。出店誘致も相次いでいるが、「自分が常駐できない店で“ひらこ屋”の看板を掲げたくない」(三上社長)との理由で、すべて辞退。代わりに店で働く若手がのれん分けで独立できるよう、人材育成に努めている。 煮干し使用量1日20~30㎏ ベースは境港産の真イワシ 毎朝4時から当日分の麺を製麺。製麺屋から仕入れた方が効率的かつ割安だが、手間を惜しまず独自の味づくりにこだわる スープの基本となるのが煮干しスープ。丸2日間、じっくり煮出した煮干しスープベースと豚骨白湯スープを同割で合わせ、さらに当日早朝、煮干しを加えて炊き出し、「とんこつ煮干しそば」のスープとする。豚骨白湯と割らず、煮干しだけ追い足しして炊き上げたスープが、「煮干しそば」のスープとなる。 煮干しは、境港産の真イワシをベースに、旬に合った数種類の煮干し・節を加味。原料の使用量は1日に20~30㎏。すべて頭、ハラワタ、血合いを取り除くため、その手間だけで原料1㎏につき1人約1時間ほどかかるという。 麺は、かんすい控えめの自家製麺、太ストレート190g(大280g)。小麦粉の風味が生き、スープの味にキレが出る、道産小麦「春よ来い」の2等粉を愛用している。チャーシューは、青森ガーリックポークの煮豚を約2㎜厚(盤形約10㎝)にカットして3枚トッピング。メンマは自家製調味して約3㎜厚にカットしたもの。 「具材(形状)はすべて昔ながらの地元嗜好に合わせています」(三上社長)と言う。 ひらこ屋の愛用食材 マルキンこいくちしょうゆ(マルキン忠勇) 規格=1斗缶 香川県小豆島、瀬戸内の醤油造りの伝統が息づく濃い口醤油。芳醇な香り、まろやかな風味、深いコクが特徴。三上店主は「香りとコクの立ち具合がよく、煮干しスープとの相性が抜群。さすが讃岐うどんを支える地場醤油だと思います」と語り、「これにキッコーマン濃い口醤油を少量配合して醤油たれ(かえし)にします」と言う。 三上玲(みかみ・れい) 1974年青森市生まれ。幼少時、母親が勤めていた食堂に通い、青森中華そばに食べなじむが、かんすい臭が苦手だったため、中華そばから遠ざかる。ガス会社に勤めていた20歳の頃、友人の誘いで食べた人気店の中華そばを食べ、幼少時の覚えと違うスープの複雑さに感銘。以来、大衆を引きつける中華そばの奥深さに魅了され、自分の味づくりを決意。市内の大型店で3年間の修業後、02年「めんや雷門」を開業。サンマ干しスープを売りに繁盛したが、サンマ干し業者(PB依頼)の廃業と店舗老朽化が重なり閉店。かねて構想を練っていた豚骨煮干しスープを開発し、05年「ひらこ屋」開業。08年、姉妹店「麺屋らいぞう」開業。青森中華そばの新潮流として脚光を浴びている。あたらしい視点でラーメンを伝える情報誌!