豚皮の濃厚系 あっさりスープ

豚皮の濃厚系 あっさりスープ

虚像の前職を脱し正直な職人気質に
貴志店主は2006年の独立開業までテレビカメラマンを25年間務め、実はその前職でもラーメンに深く関わっていた。グルメ番組の取材が多く、ラーメン店を撮影したのは1000店舗以上。その都度、ラーメン店主から裏話を聞いてメモを取り、休日に試して家族に食べさせていたのである。
「カメラマン相手だから店主も気軽に教えてくれまして。ラーメンフリークだった私も積極的に秘訣を請い、退社前には、かなりコツをつかんでいました」(貴志店主)と述懐。「でも独立となると別。人気店の模倣ではダメだと気付きました。客観的には十分な味なのですが、オリジナリティーがないから、一途になれなかったんです」と言う。
貴志店主のテレビカメラマンを辞めた理由は、テレビ業界の虚像に辟易(へきえき)したことだった。演出ばかりの業界体質に嫌気が差し、「正直を取り戻したい」との思いが募った結果、自ら「本当に好き」だといえるラーメンに行き着いた。その正直な気持ちを取り戻すべく、売れそうな商売の味ではなく、職人気質のオンリーワンの味を目指すべきと気付いたのである。
そして他店とは違う素材を模索。豚皮に着目した。「子どもの頃、ラーメン屋台のおじさんから『豚皮を入れるとスープがなめらかになる』と聞いたのを思い出しましてね。豚皮を使っている店はあるでしょう。でも看板に掲げている店は聞いたことがありません。それで豚皮にかけました」(貴志店主)と決心した。
オリジナリティーが決まれば、あとは一直線。カメラマン時代に学んだコツも大いに発揮し、短期間で濃厚あっさり系の豚皮スープを完成させた。
「おいしいか、まずいかではなく、自らの味で勝負する。ナンバーワンでなくオンリーワンを極めれば、遠くからもお客さんは来てくれる。それがラーメン作りの醍醐味。職人気質の個人店なら好立地や必要以上の儲けは必要ない」(貴志店主)と持論を説く一方、「まだまだ不十分。理想に向け、さらに努めたい」と意気込んでいる。
豚皮は週1回、神戸の南京町の食肉業者から仕入れている。白濁とトロトロのもととなるコラーゲンだけを抽出するため、24時間、気が抜けない手間を要するという


究極のオンリーワンで悪立地を攻略!特製ラーメン 900円

究極のオンリーワンで悪立地を攻略!特製ラーメン 900円

大阪の「光龍益」は、〝豚皮(とんぴ)〟を使ったコラーゲンたっぷりの白濁スープで人気の新興独立店。豚骨や脂を一切使わないトロトロ状の高粘度スープは〝濃厚あっさり系〟と評され、ラーメン史上初めて豚皮を掲げたオリジナリティーが業界通をうならせている。店主の貴志亮滋氏(52歳)は、独学1年間で脱サラ出店した、いわば未経験者だが、「ラーメンはかくあるべき」という職人気質のもと、理想を明快に実現している。
ラーメンは煮豚、特製ラーメンは叉焼。正直を貫き、煮豚とチャーシューのすみ分けにもこだわっている。
※写真は本格叉焼がのった特製ラーメン


客層は100%目的客 売り切れ御免でお客に怒られる

客層は100%目的客 売り切れ御免でお客に怒られる

割烹のような機能美にあふれた内装。お客のほとんどが豚皮スープ目当ての遠方客。貴志店主1人で調理場をまかなう。

店舗はJR桜ノ宮から徒歩2分、ほとんど人通りのない裏路地に立地。フロア面積10坪、席数12(カウンター8、テーブル4)の小規模店を、貴志店主と洗い場のパート1人でまかなっている。
客層は100%、豚皮スープを目的に来店するラーメンファン。一見客は皆無。昼と夜、実質2時間ずつの計4時間営業だが、いずれもスープ売り切れで終了。スープは各50杯分なので、定時前の閉店がほとんど。そのせいでお客から怒られることも多い。
営業時間は短いが、豚皮スープの仕込みに長時間かかるため、貴志店主はのれんの上げ下げ以外は外に出ず、店舗に住み込んでいる。土・日は休業だが、土曜日は食材仕入れ、日曜日は煮豚とチャーシューの仕込みに追われ、家族の住む自宅に帰れるのは土・日の夜だけだという。
「人の手を借りたら自分のラーメンではなくなる。だから自らの限界を超えてまで客数を増やそうとは思わない。お客さんに迷惑をかけるかもしれませんが、せっかく足を運んでくださるお客さんだからこそ、本当の自分の味を出したい」と言う


熱々にこだわるレール可動の具材パット

熱々にこだわるレール可動の具材パット

貴志店主の味に勝るこだわりは、作りたての“熱々”を提供すること。調理はすべて客席の真正面で行い、完成直後のラーメンを提供している。その実現のため、レール可動式の具材パットを独自開発。具材パットを提供する客席の真正面に移動させ、そこで調理を行い、作りたてを提供している。
器をお湯で予熱後、たれ、豚皮スープ、麺を加え、具材をトッピング。この一連の調理を、すべて客席の真正面で行う。


スープだけで食べるスープ 潔いメニュー絞り込み

スープだけで食べるスープ 潔いメニュー絞り込み

豚皮スープは、豚皮と丸鶏を白濁するまで長時間炊き出したもの。豚骨や脂は一切使用していないが、豚皮のコラーゲンだけで高粘度のトロトロ状に仕上がっている。舌触りが力強く、スープだけで〝食べるスープ〟といった感じである。
醤油たれは、日本マルテン醤油さしみ用とキッコーマン醤油を同割でブレンドしたもの。ブレンド後、鍋で沸騰させて酸味を抜き、ボトルに戻し、寝かせてから使用している。
麺は中太ストレート125g。具材は煮豚もしくは叉焼、極太メンマ、たっぷりの白ネギ。席に常備されている生ニンニク(無料)をつぶして加えることを薦めている。
メニューは、「ラーメン」(700円)、「特製ラーメン」(900円)、「ライス」(100円)、「ビール」(300円)のみ。6~9月限定で「つけ麺」(800円)を提供している。注文構成比はラーメンと特製ラーメンが半々。つけ麺の提供時は、つけ麺が半数に達するという。


マルテンさしみ醤油(日本丸天醤油)

光龍益の愛用食材

個性に優れるが、スープの個性も生かす。半年かけてキッコーマンとのブレンドに納得

スープの個性を優先できる醤油を探し、30種類以上試したという。「スープは半年くらいで完成したのですが、醤油たれの開発にも半年くらい要した」(貴志店主)と振り返る。「どの醤油も決して悪くはないのですが、その醤油独特の個性がスープの味を邪魔しましてね。ところがマルテンさしみ醤油だけは、うま味とコク、香りがありながら、のびがよく、カドが立たないで、スープによくなじむのです」と説く。キッコーマン醤油とまぜることで塩気とうま味を調整し、現在の醤油たれが完成したという。

マルテンさしみ醤油(日本丸天醤油)
規格=1,800ml


貴志亮滋(きし・りょうじ)

貴志亮滋(きし・りょうじ)

小学3年で鶏がらスープを炊く
1960年京都市生まれ。学生が多くラーメンが盛んな土地柄、また実家が仕出し料理店を経営していた影響で、ラーメンと料理に興味を持つ。小学3年時には、すでに鶏がらスープを炊きラーメンを作って家族や従業員に食べさせていたという。20歳でテレビ制作会社に入社。25年間グルメ番組を中心にテレビカメラマンを務める。2005年テレビ業界の虚像に疑問を持ち退社。1年間の独学を経て06年現店を開業。
とんぴととりの光龍益
所在地=大阪市都島区中野町5─9─5
営業時間=午前11時半〜午後1時半、6時〜11時
※ただしスープ売り切れ次第終了

ラーメン (700円)
特製ラーメン(900円)

adminラーメントレンド豚皮の濃厚系 あっさりスープ 虚像の前職を脱し正直な職人気質に 貴志店主は2006年の独立開業までテレビカメラマンを25年間務め、実はその前職でもラーメンに深く関わっていた。グルメ番組の取材が多く、ラーメン店を撮影したのは1000店舗以上。その都度、ラーメン店主から裏話を聞いてメモを取り、休日に試して家族に食べさせていたのである。 「カメラマン相手だから店主も気軽に教えてくれまして。ラーメンフリークだった私も積極的に秘訣を請い、退社前には、かなりコツをつかんでいました」(貴志店主)と述懐。「でも独立となると別。人気店の模倣ではダメだと気付きました。客観的には十分な味なのですが、オリジナリティーがないから、一途になれなかったんです」と言う。 貴志店主のテレビカメラマンを辞めた理由は、テレビ業界の虚像に辟易(へきえき)したことだった。演出ばかりの業界体質に嫌気が差し、「正直を取り戻したい」との思いが募った結果、自ら「本当に好き」だといえるラーメンに行き着いた。その正直な気持ちを取り戻すべく、売れそうな商売の味ではなく、職人気質のオンリーワンの味を目指すべきと気付いたのである。 そして他店とは違う素材を模索。豚皮に着目した。「子どもの頃、ラーメン屋台のおじさんから『豚皮を入れるとスープがなめらかになる』と聞いたのを思い出しましてね。豚皮を使っている店はあるでしょう。でも看板に掲げている店は聞いたことがありません。それで豚皮にかけました」(貴志店主)と決心した。 オリジナリティーが決まれば、あとは一直線。カメラマン時代に学んだコツも大いに発揮し、短期間で濃厚あっさり系の豚皮スープを完成させた。 「おいしいか、まずいかではなく、自らの味で勝負する。ナンバーワンでなくオンリーワンを極めれば、遠くからもお客さんは来てくれる。それがラーメン作りの醍醐味。職人気質の個人店なら好立地や必要以上の儲けは必要ない」(貴志店主)と持論を説く一方、「まだまだ不十分。理想に向け、さらに努めたい」と意気込んでいる。 豚皮は週1回、神戸の南京町の食肉業者から仕入れている。白濁とトロトロのもととなるコラーゲンだけを抽出するため、24時間、気が抜けない手間を要するという 究極のオンリーワンで悪立地を攻略!特製ラーメン 900円 大阪の「光龍益」は、〝豚皮(とんぴ)〟を使ったコラーゲンたっぷりの白濁スープで人気の新興独立店。豚骨や脂を一切使わないトロトロ状の高粘度スープは〝濃厚あっさり系〟と評され、ラーメン史上初めて豚皮を掲げたオリジナリティーが業界通をうならせている。店主の貴志亮滋氏(52歳)は、独学1年間で脱サラ出店した、いわば未経験者だが、「ラーメンはかくあるべき」という職人気質のもと、理想を明快に実現している。 ラーメンは煮豚、特製ラーメンは叉焼。正直を貫き、煮豚とチャーシューのすみ分けにもこだわっている。 ※写真は本格叉焼がのった特製ラーメン 客層は100%目的客 売り切れ御免でお客に怒られる 割烹のような機能美にあふれた内装。お客のほとんどが豚皮スープ目当ての遠方客。貴志店主1人で調理場をまかなう。 店舗はJR桜ノ宮から徒歩2分、ほとんど人通りのない裏路地に立地。フロア面積10坪、席数12(カウンター8、テーブル4)の小規模店を、貴志店主と洗い場のパート1人でまかなっている。 客層は100%、豚皮スープを目的に来店するラーメンファン。一見客は皆無。昼と夜、実質2時間ずつの計4時間営業だが、いずれもスープ売り切れで終了。スープは各50杯分なので、定時前の閉店がほとんど。そのせいでお客から怒られることも多い。 営業時間は短いが、豚皮スープの仕込みに長時間かかるため、貴志店主はのれんの上げ下げ以外は外に出ず、店舗に住み込んでいる。土・日は休業だが、土曜日は食材仕入れ、日曜日は煮豚とチャーシューの仕込みに追われ、家族の住む自宅に帰れるのは土・日の夜だけだという。 「人の手を借りたら自分のラーメンではなくなる。だから自らの限界を超えてまで客数を増やそうとは思わない。お客さんに迷惑をかけるかもしれませんが、せっかく足を運んでくださるお客さんだからこそ、本当の自分の味を出したい」と言う 熱々にこだわるレール可動の具材パット 貴志店主の味に勝るこだわりは、作りたての“熱々”を提供すること。調理はすべて客席の真正面で行い、完成直後のラーメンを提供している。その実現のため、レール可動式の具材パットを独自開発。具材パットを提供する客席の真正面に移動させ、そこで調理を行い、作りたてを提供している。 器をお湯で予熱後、たれ、豚皮スープ、麺を加え、具材をトッピング。この一連の調理を、すべて客席の真正面で行う。 スープだけで食べるスープ 潔いメニュー絞り込み 豚皮スープは、豚皮と丸鶏を白濁するまで長時間炊き出したもの。豚骨や脂は一切使用していないが、豚皮のコラーゲンだけで高粘度のトロトロ状に仕上がっている。舌触りが力強く、スープだけで〝食べるスープ〟といった感じである。 醤油たれは、日本マルテン醤油さしみ用とキッコーマン醤油を同割でブレンドしたもの。ブレンド後、鍋で沸騰させて酸味を抜き、ボトルに戻し、寝かせてから使用している。 麺は中太ストレート125g。具材は煮豚もしくは叉焼、極太メンマ、たっぷりの白ネギ。席に常備されている生ニンニク(無料)をつぶして加えることを薦めている。 メニューは、「ラーメン」(700円)、「特製ラーメン」(900円)、「ライス」(100円)、「ビール」(300円)のみ。6~9月限定で「つけ麺」(800円)を提供している。注文構成比はラーメンと特製ラーメンが半々。つけ麺の提供時は、つけ麺が半数に達するという。 光龍益の愛用食材 個性に優れるが、スープの個性も生かす。半年かけてキッコーマンとのブレンドに納得 スープの個性を優先できる醤油を探し、30種類以上試したという。「スープは半年くらいで完成したのですが、醤油たれの開発にも半年くらい要した」(貴志店主)と振り返る。「どの醤油も決して悪くはないのですが、その醤油独特の個性がスープの味を邪魔しましてね。ところがマルテンさしみ醤油だけは、うま味とコク、香りがありながら、のびがよく、カドが立たないで、スープによくなじむのです」と説く。キッコーマン醤油とまぜることで塩気とうま味を調整し、現在の醤油たれが完成したという。 マルテンさしみ醤油(日本丸天醤油) 規格=1,800ml 貴志亮滋(きし・りょうじ) 小学3年で鶏がらスープを炊く 1960年京都市生まれ。学生が多くラーメンが盛んな土地柄、また実家が仕出し料理店を経営していた影響で、ラーメンと料理に興味を持つ。小学3年時には、すでに鶏がらスープを炊きラーメンを作って家族や従業員に食べさせていたという。20歳でテレビ制作会社に入社。25年間グルメ番組を中心にテレビカメラマンを務める。2005年テレビ業界の虚像に疑問を持ち退社。1年間の独学を経て06年現店を開業。 とんぴととりの光龍益 所在地=大阪市都島区中野町5─9─5 営業時間=午前11時半〜午後1時半、6時〜11時 ※ただしスープ売り切れ次第終了 ラーメン (700円) 特製ラーメン(900円)あたらしい視点でラーメンを伝える情報誌!