“発祥の地”横浜はさすが奥深い。源流にこだわり地域性を生かす

発祥の地”横浜はさすが奥深い。源流にこだわり地域性を生かす

長い鎖国の時代を越え、黒船来航以来、異国文化が流入し、長崎、神戸、横浜などの港町に唐人街ができた。そこで出されていた中国の麺が、長崎ではチャンポンに、そして横浜ではラーメンへと進化していく。
明治中期に横浜で引かれていた屋台の麺は、塩味スープにネギがのるだけ。それにメンマがのり、縁を赤く染めた焼き豚が加わる。そして華僑の知恵か日本人のアイデアか、塩味のスープを日本人向けにと、醤油を加える工夫がされる。
こうして中国の麺料理が日本のラーメンへと進化していく。進化しはじめてから100年ほどのほやほやの食文化である。中国4000年の麺料理とラーメンの違いは、醤油で味付けしたことに始まるスープの味付けにある。
中国の麺料理は、上にのせた具と薄味のスープが一体となってひとつの料理になる。いわば日本の丼物と同じ感覚である。対するラーメンは、スープと麺だけでも味わえる強い味付けをする。ご飯物でいえば、チャーハンのような存在である。
中国の麺料理からラーメンへと変わっていく、進化の途上のような麺が、横浜に古くからある店には今も存在する。ラーメン発祥の地、横浜の源流の味である。
その他にも、横浜には「タンメン」「サンマーメン」といった中国にはない横浜独自の麺文化が存在する。
タンメンは、野菜炒めを塩味スープの上にのせた、いわば「塩野菜ラーメン」。サンマーメンは、モヤシ炒めを片栗粉でとろみを付けたものを、醤油味スープの上にのせた、いわば「あんかけモヤシラーメン」である。
タンメンの語源は「湯麺=スープ麺」と考えるのが妥当。サンマーメンは「生馬麺」「生碼麺」「三碼麺」などの文字が当てられ、それぞれそれらしい意味を持った説がある。
このサンマーメンの生息地域は、多摩川と大井川の間の海沿いのエリア。横浜を中心とする神奈川と静岡の一部地域だけに伝わり、東京にまでは伝播しなかったという面白い麺文化である。(現在は全国に普及しつつある)
豚骨醤油味の濃厚スープに鶏脂を加えたこってり味。麺は極太で短めのもの。具はチャーシューとネギにホウレンソウ、それに真四角の大きな海苔が3枚のる。
味の濃さ、脂の多さ、麺の硬さが自由に選べるスタイルのニューウエーブ横浜ラーメン。この「家系」(いえけい)と呼ばれるラーメンは横浜中に広がり、今では首都圏にとどまらず、全国に進出している。
家系の元祖は、横浜(創業は新杉田)にある「吉村家」。ここの弟子、孫弟子から、全然関係のない人までなぜか屋号を「○○家」と名付け、前述の味とシステムを導入している。最近では○○家という屋号を使わずに、同系列の味とシステムを取り入れている店も増えている。
吉村家の系統は全国に増殖し続けている。いまや、横浜ラーメンといえば家系がイメージされるほどだ。しかし、横浜にはラーメンの源流もあれば、ほかにはない独自の麺文化もある。歴史と呼ぶにはあまりに短い食文化であるラーメン。その発祥地である横浜の味わいは、なかなか奥の深いものがある。
原文:ラーメン総合研究所 代表 武内伸
監修:新横浜ラーメン博物館 中野正博


家系の総本山

家系の総本山

「吉村家」 ラーメン 630円

店舗所在地=横浜市西区南幸2-12-6
横浜ラーメンの代名詞となった“家系”の総本山。濃厚な豚骨醤油に大きな海苔3枚とホウレンソウがトレードマーク。濃さ、硬さ、量を選べるカスタマイズの先駆でもある。

淡麗系の先駆

淡麗系の先駆

「支那そばや本店」 醤油らぁ麺 800円
店舗所在地=横浜市戸塚区戸塚町4081-1
佐野実店主は厳選素材による淡麗系の先駆。世界中の地鶏を試し、それぞれの持ち味を生かすため、日齢を調整して独自に掛け合わせるなど、スープ専用の地鶏を飼育している。

adminご当地ラーメン徹底研究“発祥の地”横浜はさすが奥深い。源流にこだわり地域性を生かす 長い鎖国の時代を越え、黒船来航以来、異国文化が流入し、長崎、神戸、横浜などの港町に唐人街ができた。そこで出されていた中国の麺が、長崎ではチャンポンに、そして横浜ではラーメンへと進化していく。 明治中期に横浜で引かれていた屋台の麺は、塩味スープにネギがのるだけ。それにメンマがのり、縁を赤く染めた焼き豚が加わる。そして華僑の知恵か日本人のアイデアか、塩味のスープを日本人向けにと、醤油を加える工夫がされる。 こうして中国の麺料理が日本のラーメンへと進化していく。進化しはじめてから100年ほどのほやほやの食文化である。中国4000年の麺料理とラーメンの違いは、醤油で味付けしたことに始まるスープの味付けにある。 中国の麺料理は、上にのせた具と薄味のスープが一体となってひとつの料理になる。いわば日本の丼物と同じ感覚である。対するラーメンは、スープと麺だけでも味わえる強い味付けをする。ご飯物でいえば、チャーハンのような存在である。 中国の麺料理からラーメンへと変わっていく、進化の途上のような麺が、横浜に古くからある店には今も存在する。ラーメン発祥の地、横浜の源流の味である。 その他にも、横浜には「タンメン」「サンマーメン」といった中国にはない横浜独自の麺文化が存在する。 タンメンは、野菜炒めを塩味スープの上にのせた、いわば「塩野菜ラーメン」。サンマーメンは、モヤシ炒めを片栗粉でとろみを付けたものを、醤油味スープの上にのせた、いわば「あんかけモヤシラーメン」である。 タンメンの語源は「湯麺=スープ麺」と考えるのが妥当。サンマーメンは「生馬麺」「生碼麺」「三碼麺」などの文字が当てられ、それぞれそれらしい意味を持った説がある。 このサンマーメンの生息地域は、多摩川と大井川の間の海沿いのエリア。横浜を中心とする神奈川と静岡の一部地域だけに伝わり、東京にまでは伝播しなかったという面白い麺文化である。(現在は全国に普及しつつある) 豚骨醤油味の濃厚スープに鶏脂を加えたこってり味。麺は極太で短めのもの。具はチャーシューとネギにホウレンソウ、それに真四角の大きな海苔が3枚のる。 味の濃さ、脂の多さ、麺の硬さが自由に選べるスタイルのニューウエーブ横浜ラーメン。この「家系」(いえけい)と呼ばれるラーメンは横浜中に広がり、今では首都圏にとどまらず、全国に進出している。 家系の元祖は、横浜(創業は新杉田)にある「吉村家」。ここの弟子、孫弟子から、全然関係のない人までなぜか屋号を「○○家」と名付け、前述の味とシステムを導入している。最近では○○家という屋号を使わずに、同系列の味とシステムを取り入れている店も増えている。 吉村家の系統は全国に増殖し続けている。いまや、横浜ラーメンといえば家系がイメージされるほどだ。しかし、横浜にはラーメンの源流もあれば、ほかにはない独自の麺文化もある。歴史と呼ぶにはあまりに短い食文化であるラーメン。その発祥地である横浜の味わいは、なかなか奥の深いものがある。 原文:ラーメン総合研究所 代表 武内伸 監修:新横浜ラーメン博物館 中野正博 家系の総本山 「吉村家」 ラーメン 630円 店舗所在地=横浜市西区南幸2-12-6 横浜ラーメンの代名詞となった“家系”の総本山。濃厚な豚骨醤油に大きな海苔3枚とホウレンソウがトレードマーク。濃さ、硬さ、量を選べるカスタマイズの先駆でもある。 淡麗系の先駆 「支那そばや本店」 醤油らぁ麺 800円 店舗所在地=横浜市戸塚区戸塚町4081-1 佐野実店主は厳選素材による淡麗系の先駆。世界中の地鶏を試し、それぞれの持ち味を生かすため、日齢を調整して独自に掛け合わせるなど、スープ専用の地鶏を飼育している。あたらしい視点でラーメンを伝える情報誌!