NYラーメン最前線 アイバン・ラーメン

NY・仏料理店のシェフだったアイバン・オーキン氏が東京でラーメン店を開業したのは2007年。一躍評判になり、13年にNYに帰郷。フードコート「ゴーサム・ウエスト・マーケット」にNY1号店「アイバン・ラーメン・スラープ・ショップ」を開業。NYのラーメン市場に話題と活気を与えた。現在、3号店の開業を目指している。かたや“ラーメン愛”をテーマに執筆活動に取り組むなど、日本の魅力を発信する活動にも積極的。日本語を話し、日本を知り尽くした日本通歴36年の日本愛好家、オーキン氏に聞いた。

dQdTBbvz_VL023_r011番人気「トリプルポーク・トリプルガーリック混ぜ麺」(下)と3番人気の「東京醤油ラーメン」(上)(写真:Daniel Krieger)

人気ベスト3

<1位>「トリプルポーク・トリプルガーリック混ぜ麺」(16$)=スープは少なめ。全粒粉たっぷりの麺。トッピングは、チャーシュー、ベーコン、ネギ、鰹節粉など。豚骨とニンニクが効いた濃厚な豚骨スープを麺に絡める。

<2位>「スパイシー・レッド・チリ・ラーメン」(15$)=つぶした半熟卵をトッピング。見るからに辛そうな赤いスープは、むせるほど辛く、奥行きとメリハリがありながら、サッパリした後味。

<3位>「東京塩ラーメン」(15$)=チャーシューは分厚くトロトロの自家製。千切りにしたネギもたっぷり。スープはタンパクで繊細。シコシコとした歯ごたえのライ麦の麺がよく合う。


日本好きと料理好きをラーメンで両立

――ラーメン作りのきっかけは?
15歳のころ、日本料理店でバイトをしたことがきっかけ。板前さんたちもみな親切で、とてもかわいがってくれ、日本によい印象を持った。大学では日本語を専攻し、卒業してから日本にわたって日本にどっぷりつかって生活した。そしてラーメンに出会い感動した。帰郷後、フランス料理店で頭の中はラーメンでいっぱいで、ラーメンしか考えられなかった。
3、4年の間、妻が働き、僕は家で子どもの世話をする主夫をしていたが、その間にラーメンを食べ歩いた。そろそろ仕事を始めようということになったとき、ラーメン店を始めようと考えた。もちろん、それはなかなか微妙な選択ではあったけれど、ラーメン作りは楽しいだろうと思い、自力でラーメンを研究して始めた。アメリカ人のラーメン店ということで、物珍しさで話題になるとは思ったが、客は好奇心で一度は来ても、おいしくなければ再び来ないということも冷静に分っていた。油断はできず、ちゃんとしなければならないということは重々分かっていた。
店を始めたときには、やっていける自信は、すごくあった。客に店に来てもらって、食べてもらって金をもらうということは、自信がないとできない。僕には、自分のラーメンがおいしいという自信があった。麺も自家製麺にこだわった。今でも自分の麺は世界で一番好きだ。

――ラーメン店での苦労は?
ラーメン店を始めたときは40代になっていたが、特に苦労をしたという思いはない。最初からパーフェクトというわけではなかったが、僕自身も、すでにCIAを卒業してフランス料理を学び、ニューヨークの有名レストランで活躍した経験もあった。ラーメンであれ、仏料理であれ、料理は料理だ。

ライ麦入り特性麺が決め手

――ラーメン作りのこだわりは?
麺に一番こだわっている。風味と触感、歯応えを重視し、麺にライ麦を加えている。日本でもNYでも、僕の麺は普通の麺とは違うと思う。ライ麦を加えると鼻を突くような風味が出て触感もよくなると思う。
スープは、日本から取り寄せた丸鶏と魚介節を使って、自分で炊き出している。豚骨は胃にもたれるし、眠くもなる。ダブル・スープだと胃にもたれないし、眠くもならない。

――米国では豚骨ラーメンが人気?
豚骨ラーメンに人気があるのは、豚骨の方が分かりやすいからだ。日本でも、豚骨は人気がある。ラーメンおたくも、豚骨好きの人の方が多いかも。ハンバーガーだって、どちらかというと、ダブルチーズバーガーの方が好きな人が多い。確かに米国では豚骨が人気だけれど、僕は自分のラーメンを貫きたい。米国の店だからといって味を変えたりなどしない。日本で覚えた味と同じ味を出している。基本的に誰かのために味を変えるということはしない。自分の舌のために料理をしている。そして自分の舌を信じている。

日本の魅力をNYで発信

――NYラーメンの展望は?
米国のラーメンは米国スタイルに突き進むと思う。日本スタイルが広がるのは難しい。たとえば、米国がイタリアやフランスに行ってレストランで修業するのは難しくないが、米国人が日本に行って「ラーメン店で修業したい」といっても無理。ビザを取るのも大変だし、日本語もできないし、そもそも、普通のラーメン店は忙しくて教える余裕などない。私は日本語が話せてもラーメン店で修業できなかった。なので、米国人は見よう見まねで自分のラーメンを作るしか手がない。それでもおいしいラーメンができているし、ユニークなトッピングが出てきたり、それで悪くないと思う。一番大切なのは、楽しんでいるか、情熱があるかだ。
米国人に「ラーメンの店のメニューは?」と聞けば、みんな「ラーメンとバンズ(包子)」と答える。バンズは「モモフク・ヌードルバー」のデヴィッド・チャン氏(NYのラーメンブームの火付け役)が始めたことだ。その影響で米国では「ラーメンにバンズは付き物」ということになった。「一風堂」でもバンズを出している。でも日本では、バンズなんて見たこともないし、聞いたこともない。

――米国のラーメン文化は独自に発展?
その通り。たとえば日本では、短時間でササッと食べて帰るが、米国では酒を飲みながらほかの料理も食べて、時間をかけてゆっくり楽しむ。その路線で進むだろう。ワクワクする楽しいトッピングが増えるなど、そのような米国独特のラーメン文化が育まれていくと思う。

――今後の抱負は?
「アイバン・ラーメン」NY3号店の出店を予定している。拡大するというよりも、とりあえず1店ずつ着実に。日本が大好きだから、商売だけでなく、日本のことを応援し続けていきたい。日本の味を多くの米国人に理解してほしいし、日本に行ってほしいし、ラーメンのよさを分かってほしい。
ずっと日本が大好き。そして食べ物が大好き。ラーメンがその二つを重ねてくれた。二つの好きなことを両立できるのはとても幸せだ。


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オーナーシェフ アイバン・オーキン氏

◆アイバン・オーキン氏=1963年NY州ロングアイランド生まれ。コロラド大学で日本語を専攻し、卒業と同時に来日。1990年NYに戻り、米国最高峰の調理師学校「カリナリー・インスティテュート・オブ・アメリカ」(CIA)で学んだあと、NYの一流仏料理店で働く。2003年に再び来日、2007年にラーメン店「アイバン・ラーメン」を東京・芦花公園に出店。「外国人のラーメン屋」として大成功し、2010年に東京・経堂に「アイバン・ラーメンplus」を開業。(2014年閉店)。2013年NYに「アイバン・ラーメン・スラープショップ」開業、2014年に旗艦店「アイバン・ラーメン」を開業。NYでも大成功を収める。日本通歴36年。妻も日本人。自称「ゴキゲンな人、しかし超マジメ」。モットーは「マジメにしないとおいしいものは作れない」。

4ASvPLfb◆アイバン・ラーメン(Ivan Ramen)
所在地=25Clinton Street New York NY
開業=2014年5月/席数=65席
客単価=約40$
来客数=平日300人、休日500人(第1号店のアイバン・ラーメン・スラープ・ショップは、多い日で約1200人)

adminコラムNYラーメン最前線 アイバン・ラーメン NY・仏料理店のシェフだったアイバン・オーキン氏が東京でラーメン店を開業したのは2007年。一躍評判になり、13年にNYに帰郷。フードコート「ゴーサム・ウエスト・マーケット」にNY1号店「アイバン・ラーメン・スラープ・ショップ」を開業。NYのラーメン市場に話題と活気を与えた。現在、3号店の開業を目指している。かたや“ラーメン愛”をテーマに執筆活動に取り組むなど、日本の魅力を発信する活動にも積極的。日本語を話し、日本を知り尽くした日本通歴36年の日本愛好家、オーキン氏に聞いた。 1番人気「トリプルポーク・トリプルガーリック混ぜ麺」(下)と3番人気の「東京醤油ラーメン」(上)(写真:Daniel Krieger) 人気ベスト3 <1位>「トリプルポーク・トリプルガーリック混ぜ麺」(16$)=スープは少なめ。全粒粉たっぷりの麺。トッピングは、チャーシュー、ベーコン、ネギ、鰹節粉など。豚骨とニンニクが効いた濃厚な豚骨スープを麺に絡める。 <2位>「スパイシー・レッド・チリ・ラーメン」(15$)=つぶした半熟卵をトッピング。見るからに辛そうな赤いスープは、むせるほど辛く、奥行きとメリハリがありながら、サッパリした後味。 <3位>「東京塩ラーメン」(15$)=チャーシューは分厚くトロトロの自家製。千切りにしたネギもたっぷり。スープはタンパクで繊細。シコシコとした歯ごたえのライ麦の麺がよく合う。 日本好きと料理好きをラーメンで両立 ――ラーメン作りのきっかけは? 15歳のころ、日本料理店でバイトをしたことがきっかけ。板前さんたちもみな親切で、とてもかわいがってくれ、日本によい印象を持った。大学では日本語を専攻し、卒業してから日本にわたって日本にどっぷりつかって生活した。そしてラーメンに出会い感動した。帰郷後、フランス料理店で頭の中はラーメンでいっぱいで、ラーメンしか考えられなかった。 3、4年の間、妻が働き、僕は家で子どもの世話をする主夫をしていたが、その間にラーメンを食べ歩いた。そろそろ仕事を始めようということになったとき、ラーメン店を始めようと考えた。もちろん、それはなかなか微妙な選択ではあったけれど、ラーメン作りは楽しいだろうと思い、自力でラーメンを研究して始めた。アメリカ人のラーメン店ということで、物珍しさで話題になるとは思ったが、客は好奇心で一度は来ても、おいしくなければ再び来ないということも冷静に分っていた。油断はできず、ちゃんとしなければならないということは重々分かっていた。 店を始めたときには、やっていける自信は、すごくあった。客に店に来てもらって、食べてもらって金をもらうということは、自信がないとできない。僕には、自分のラーメンがおいしいという自信があった。麺も自家製麺にこだわった。今でも自分の麺は世界で一番好きだ。 ――ラーメン店での苦労は? ラーメン店を始めたときは40代になっていたが、特に苦労をしたという思いはない。最初からパーフェクトというわけではなかったが、僕自身も、すでにCIAを卒業してフランス料理を学び、ニューヨークの有名レストランで活躍した経験もあった。ラーメンであれ、仏料理であれ、料理は料理だ。 ライ麦入り特性麺が決め手 ――ラーメン作りのこだわりは? 麺に一番こだわっている。風味と触感、歯応えを重視し、麺にライ麦を加えている。日本でもNYでも、僕の麺は普通の麺とは違うと思う。ライ麦を加えると鼻を突くような風味が出て触感もよくなると思う。 スープは、日本から取り寄せた丸鶏と魚介節を使って、自分で炊き出している。豚骨は胃にもたれるし、眠くもなる。ダブル・スープだと胃にもたれないし、眠くもならない。 ――米国では豚骨ラーメンが人気? 豚骨ラーメンに人気があるのは、豚骨の方が分かりやすいからだ。日本でも、豚骨は人気がある。ラーメンおたくも、豚骨好きの人の方が多いかも。ハンバーガーだって、どちらかというと、ダブルチーズバーガーの方が好きな人が多い。確かに米国では豚骨が人気だけれど、僕は自分のラーメンを貫きたい。米国の店だからといって味を変えたりなどしない。日本で覚えた味と同じ味を出している。基本的に誰かのために味を変えるということはしない。自分の舌のために料理をしている。そして自分の舌を信じている。 日本の魅力をNYで発信 ――NYラーメンの展望は? 米国のラーメンは米国スタイルに突き進むと思う。日本スタイルが広がるのは難しい。たとえば、米国がイタリアやフランスに行ってレストランで修業するのは難しくないが、米国人が日本に行って「ラーメン店で修業したい」といっても無理。ビザを取るのも大変だし、日本語もできないし、そもそも、普通のラーメン店は忙しくて教える余裕などない。私は日本語が話せてもラーメン店で修業できなかった。なので、米国人は見よう見まねで自分のラーメンを作るしか手がない。それでもおいしいラーメンができているし、ユニークなトッピングが出てきたり、それで悪くないと思う。一番大切なのは、楽しんでいるか、情熱があるかだ。 米国人に「ラーメンの店のメニューは?」と聞けば、みんな「ラーメンとバンズ(包子)」と答える。バンズは「モモフク・ヌードルバー」のデヴィッド・チャン氏(NYのラーメンブームの火付け役)が始めたことだ。その影響で米国では「ラーメンにバンズは付き物」ということになった。「一風堂」でもバンズを出している。でも日本では、バンズなんて見たこともないし、聞いたこともない。 ――米国のラーメン文化は独自に発展? その通り。たとえば日本では、短時間でササッと食べて帰るが、米国では酒を飲みながらほかの料理も食べて、時間をかけてゆっくり楽しむ。その路線で進むだろう。ワクワクする楽しいトッピングが増えるなど、そのような米国独特のラーメン文化が育まれていくと思う。 ――今後の抱負は? 「アイバン・ラーメン」NY3号店の出店を予定している。拡大するというよりも、とりあえず1店ずつ着実に。日本が大好きだから、商売だけでなく、日本のことを応援し続けていきたい。日本の味を多くの米国人に理解してほしいし、日本に行ってほしいし、ラーメンのよさを分かってほしい。 ずっと日本が大好き。そして食べ物が大好き。ラーメンがその二つを重ねてくれた。二つの好きなことを両立できるのはとても幸せだ。 オーナーシェフ アイバン・オーキン氏 ◆アイバン・オーキン氏=1963年NY州ロングアイランド生まれ。コロラド大学で日本語を専攻し、卒業と同時に来日。1990年NYに戻り、米国最高峰の調理師学校「カリナリー・インスティテュート・オブ・アメリカ」(CIA)で学んだあと、NYの一流仏料理店で働く。2003年に再び来日、2007年にラーメン店「アイバン・ラーメン」を東京・芦花公園に出店。「外国人のラーメン屋」として大成功し、2010年に東京・経堂に「アイバン・ラーメンplus」を開業。(2014年閉店)。2013年NYに「アイバン・ラーメン・スラープショップ」開業、2014年に旗艦店「アイバン・ラーメン」を開業。NYでも大成功を収める。日本通歴36年。妻も日本人。自称「ゴキゲンな人、しかし超マジメ」。モットーは「マジメにしないとおいしいものは作れない」。 ◆アイバン・ラーメン(Ivan Ramen) 所在地=25Clinton Street New York NY 開業=2014年5月/席数=65席 客単価=約40$ 来客数=平日300人、休日500人(第1号店のアイバン・ラーメン・スラープ・ショップは、多い日で約1200人)あたらしい視点でラーメンを伝える情報誌!