テーマ 「少子化がラーメン業界に与える影響とは?」

少子高齢化の影響はラーメン業界とも無縁ではない。そのひとつが、時代を担う意欲ある人材の減少だ。ラーメンに自分の将来を託そうと夢を描く若者が減ることについて、現在、第一線で活躍する店主3氏はどのように対応しているのか? さらにラーメン業界の活性化のために今、何が求められているのかについて聞いた。

司会・ラーメン新聞 編集長 岡安 秀一

少子化で深刻な人材難に

司会 少子化の影響は? ラーメン店の経営者として深刻?

A氏 10代、20代の人口が減るということは、その世代の顧客数の減少につながると思う。「おなかがすいたからラーメンでも食べて帰ろう」という部活帰りの高校生やアルバイト帰りの学生のお客さんが減るのではないかと心配している。若者のパワーが弱まるのは深刻だ。

B氏 少子化が及ぼすもっと大きな影響が人材難。スタッフを募集しても応募がない。あるテレビ番組でも取り上げていたが、飲食業界に若い人材が集まらないという。景気が徐々に回復して、求人が増えていることもあり、時給1000円では飲食店で働きたくないと考える若い世代が増えている。雇えたとしても長続きしない。

C氏 以前は、時給1000円は高い方だったが、今は1000円では安すぎると思うのだろう。経営者としては頭が痛い。

A氏 先月、募集を出したが、5人しか応募がなかった。以前なら20人くらいは来ていたが、今後、どうなるのか不安を感じる。オペレーションの再構築も避けられない。 B氏 それと、今の若い世代は物欲がない。自分たちの世代は車が欲しいとか、おしゃれをして女の子にモテたいとか、そういう欲求がお金を稼ぐことの動機づけになっていたと思う。そういうギラギラ感が全く無い。

C氏 物欲だけではなく、〝食欲?もない。食べることへの関心が希薄だと思う。おいしいものを食べたいとか、「あそこの店のあれがうまいから、ちょっと高いけど行ってみよう」というのがない。食べることにお金をかけないと思う。食事の回数自体が減っているというデータもあるようだ。その代わり、彼らがお金をかけるのが通信費。休憩時間もスマホばかりをいじっている。コミュニケーションは減るばかり。 B氏 家の中にいても外の人とつながっているから、ますます外に出て働く意欲がなくなるのだろう。だから物欲にも希薄。

A氏 今の若い世代が食べることにお金をかけないというのは、自分も実感する。以前、店の学生スタッフから「ラーメンは高いからあまり食べません」と言われてショックだった。「ラーメンは国民食」といわれるくらい庶民的な食べ物で安いと思っていたが、「ラーメンは高い」と言われて、彼らの「食」に対する金銭感覚は自分たちの世代とは違うと思った。むしろ自分達の金銭感覚がズレているのか?

C氏 彼らは「空腹が満たされれば、なんでもいい」くらいに思っているのかもしれない。そのくらい消極的だ。

B氏 食べることに関心がなければ、飲食店で働こうとは思わないだろう。

C氏 ましてや自分の店を持ちたいとも思わない。その方がライバルが少なくていい。ぼくらがラーメン業界をしっかり支えていけばいいことだ。ラーメン店も多すぎることだし。 A氏 独立しても失敗する例が少なくないことを考えると、そういうリスクを背負うよりも、従業員として給料をもらっている方が安定していると考える人も多い。それでハッピーだとは思えないのだが。

B氏 ぼくらのころは、一生懸命働いてお金を稼ぎたいと思っていたが、今は少し違う気がする。お金よりもプライベート優先。優先順位が逆転している。

C氏 「稼ぎたい」と口では言うが、お客さんが少ないので「きょうはもういいよ」と言うと、すんなり帰る。そういうときに残って「ラーメンの作り方を教えてください」と意欲を見せる若者はほとんどいない。昔と違って教わる環境が整っているのに。

A氏 その点、飲食店でアルバイトをしている外国人留学生は意欲的だという話を聞いた。ラーメンもこれだけグローバルになってくると、日本でアルバイトをしながらラーメン作りの技術を習得し、帰国してからラーメン店を立ち上げる外国人が増えてくるのではないか?

C氏 今の若い世代には「責任は持ちたくないが、認められたい」願望がある。家でも学校でもほめられて育ってきた世代のせいか、ほめられたい欲求が強い。だから、雇う側は彼らが当たり前のことをしただけでもほめる。ほめないとやる気をなくすので。最近は自分の〝ほめ言葉?が上達していると思う。

A氏 叱るなんてことは、絶対しない。我慢強く指導していくしかないと思う。お客よりも面倒でストレスが溜まるが。

B氏 その代わり、意欲のある若者にとってはチャンスだと思う。やる気を出せば、ライバルが少ない分、頭角を現すことができると思う。先輩にもかわいがってもらえるし。

C氏 大手外食チェーン店でも離職率は高い。それだけ飲食業界で働くことは、根性がいるのだと思う。しかし一方で、ラーメン業界はやる気さえあれば、一般の企業よりも独立できるチャンスははるかに大きい。せっかく繁盛店で働く機会を得たのだから、その店の技術を貪欲に学んで独立を目指してほしいと思う。

Webメディアの活用も不可欠

司会 メディアの活用については? いまでも集客パワーがある?

A氏 雑誌に載るのは有難いことだが、それで集客数が増えるという時代ではない。お客も情報過多に飽きている。

B氏 テレビは反響があるが、その期間は以前よりかなり短くなっていると思う。放送されて数日間は客数がドーンと増えるが、それもすぐに終わる。一過性が年々強まっている。

C氏 昔は、ラーメン評論家と呼ばれる人たちの評価が影響力を持っていたが、今は「食ベログ」などで一般の人たちが書いたコメントの方が影響力があるように思う。知り合いの店も皆、そう感じている。

A氏 ぼくは「食ベログ」は見ないことにしている。接客についてのコメントは反省点として参考にするが、味についての批評は読まない。新しい味に挑戦したくて出した限定メニューに批判的なコメントがあると、気持ちが萎縮して、自分が作りたいものが作れないこともある。臆病といわれても仕方ないが。 B氏 「「食ベログ」のコメントよりも店の常連さんの評価の方が参考になる。とくに、いつもとの違いを指摘されると。

C氏 facebook も影響力が大きい。口コミの最先端だと思う。

B氏 がテーブルに来たら、食べる前にまず写真を撮る。以前は、冷めるから早く食べてほしいと思ったこともあるが、今は何とも思わない。むしろ、facebookにアップしてくれるのであれば、宣伝になるのでありがたいと思う。都合のよい希望ではあるが。

A氏 facebook やツイッターは見た人の反応が早いから、利用次第では宣伝ツールになり得るかもしれない。ラーメン業界でも勉強する機運が高まっている。

B氏 いいことを書いてくれればいいが、いわれのないことを書かれるのは困る。それが勝手に一人歩きして広まることもある。諸刃の剣は否めない。

C氏 昔はそういう中傷に左右されることもあったが、今は見る側にも匿名のコメントの信ぴょう性を見極める目がある。批判的なコメントがアップしても、それは客数に大きく影響することはない。実際のお客はもっと賢い。

B氏 店のホームページでラーメンではなく寸胴の写真をアップしたら反響があった。完成したラーメンを見せるよりも、裏方の方が興味をひくのかもしれない。作っているところを動画で紹介するというのもひとつの宣伝方法だと思う。いずれにせよ、我々自身が新しいメディアをもっと活用すべき。

サイドメニューは丼物やカレ ーなどご飯物が根強い

司会 最近のサイドメニューのトレンドは?

B氏 チャーシューや唐揚げなど肉系は、やはり引きになる。サイドメニューまで注文してくれると売上げ的にはありがたい。手軽で原価も低いし。

C氏 サイドメニューではないが、コメをいいものに変えたらライスがよく出るようになった。「ご飯がおいしい」というのは分かりやすいのだと思う。やはり日本人だから。

A氏 近所の家系の店がライス無料にしたら、まわりで無料にする店が増えた。自分は追随するのが嫌だったので、チャーシューエッグ丼200円というご飯物のサイドメニューを作ったら評判がいい。付加価値はやはり大切。

B氏 サイドメニューの値段設定は200円が手ごろ。自販機に1000円札を入れて、ラーメンとサイドメニューのチケットを買って、100円程度のおつりが出てくるくらいがいい。

C氏 カレーもいいと思う。ラーメンのスープで作るカレーをまかないで出すことがある。ラーメン店ならではのカレーは、単純で分かりやすいし、話題的にもユニーク。意外に有望株?

A氏 サイドメニューはあくまでもサブ。サイドメニュー目当てで来店するお客さんはいないので、うまいラーメンを作り続けることが基本だ。

A・B・C氏 それが一番難しい!


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A氏(39歳)

2004年開業。メーン商品は豚骨しょうゆラーメン。濃厚豚骨スープと自家製麺が特徴。自身もラーメンオタクで全国のラーメンを食べ歩く。


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B氏(38歳)

2000年開業。「煮干しが効いた醤油ベースのスープ」「極太麺」「背脂」が特徴。現在、都内に3店舗を経営。


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C氏(35歳)

2000年開業。家系ラーメン店。都内にラーメン店、定食屋など10軒を経営。創業12年の本店は地元の人に愛される“思い出のラーメン”。

adminコラムテーマ 「少子化がラーメン業界に与える影響とは?」 少子高齢化の影響はラーメン業界とも無縁ではない。そのひとつが、時代を担う意欲ある人材の減少だ。ラーメンに自分の将来を託そうと夢を描く若者が減ることについて、現在、第一線で活躍する店主3氏はどのように対応しているのか? さらにラーメン業界の活性化のために今、何が求められているのかについて聞いた。 司会・ラーメン新聞 編集長 岡安 秀一 少子化で深刻な人材難に 司会 少子化の影響は? ラーメン店の経営者として深刻? A氏 10代、20代の人口が減るということは、その世代の顧客数の減少につながると思う。「おなかがすいたからラーメンでも食べて帰ろう」という部活帰りの高校生やアルバイト帰りの学生のお客さんが減るのではないかと心配している。若者のパワーが弱まるのは深刻だ。 B氏 少子化が及ぼすもっと大きな影響が人材難。スタッフを募集しても応募がない。あるテレビ番組でも取り上げていたが、飲食業界に若い人材が集まらないという。景気が徐々に回復して、求人が増えていることもあり、時給1000円では飲食店で働きたくないと考える若い世代が増えている。雇えたとしても長続きしない。 C氏 以前は、時給1000円は高い方だったが、今は1000円では安すぎると思うのだろう。経営者としては頭が痛い。 A氏 先月、募集を出したが、5人しか応募がなかった。以前なら20人くらいは来ていたが、今後、どうなるのか不安を感じる。オペレーションの再構築も避けられない。 B氏 それと、今の若い世代は物欲がない。自分たちの世代は車が欲しいとか、おしゃれをして女の子にモテたいとか、そういう欲求がお金を稼ぐことの動機づけになっていたと思う。そういうギラギラ感が全く無い。 C氏 物欲だけではなく、〝食欲?もない。食べることへの関心が希薄だと思う。おいしいものを食べたいとか、「あそこの店のあれがうまいから、ちょっと高いけど行ってみよう」というのがない。食べることにお金をかけないと思う。食事の回数自体が減っているというデータもあるようだ。その代わり、彼らがお金をかけるのが通信費。休憩時間もスマホばかりをいじっている。コミュニケーションは減るばかり。 B氏 家の中にいても外の人とつながっているから、ますます外に出て働く意欲がなくなるのだろう。だから物欲にも希薄。 A氏 今の若い世代が食べることにお金をかけないというのは、自分も実感する。以前、店の学生スタッフから「ラーメンは高いからあまり食べません」と言われてショックだった。「ラーメンは国民食」といわれるくらい庶民的な食べ物で安いと思っていたが、「ラーメンは高い」と言われて、彼らの「食」に対する金銭感覚は自分たちの世代とは違うと思った。むしろ自分達の金銭感覚がズレているのか? C氏 彼らは「空腹が満たされれば、なんでもいい」くらいに思っているのかもしれない。そのくらい消極的だ。 B氏 食べることに関心がなければ、飲食店で働こうとは思わないだろう。 C氏 ましてや自分の店を持ちたいとも思わない。その方がライバルが少なくていい。ぼくらがラーメン業界をしっかり支えていけばいいことだ。ラーメン店も多すぎることだし。 A氏 独立しても失敗する例が少なくないことを考えると、そういうリスクを背負うよりも、従業員として給料をもらっている方が安定していると考える人も多い。それでハッピーだとは思えないのだが。 B氏 ぼくらのころは、一生懸命働いてお金を稼ぎたいと思っていたが、今は少し違う気がする。お金よりもプライベート優先。優先順位が逆転している。 C氏 「稼ぎたい」と口では言うが、お客さんが少ないので「きょうはもういいよ」と言うと、すんなり帰る。そういうときに残って「ラーメンの作り方を教えてください」と意欲を見せる若者はほとんどいない。昔と違って教わる環境が整っているのに。 A氏 その点、飲食店でアルバイトをしている外国人留学生は意欲的だという話を聞いた。ラーメンもこれだけグローバルになってくると、日本でアルバイトをしながらラーメン作りの技術を習得し、帰国してからラーメン店を立ち上げる外国人が増えてくるのではないか? C氏 今の若い世代には「責任は持ちたくないが、認められたい」願望がある。家でも学校でもほめられて育ってきた世代のせいか、ほめられたい欲求が強い。だから、雇う側は彼らが当たり前のことをしただけでもほめる。ほめないとやる気をなくすので。最近は自分の〝ほめ言葉?が上達していると思う。 A氏 叱るなんてことは、絶対しない。我慢強く指導していくしかないと思う。お客よりも面倒でストレスが溜まるが。 B氏 その代わり、意欲のある若者にとってはチャンスだと思う。やる気を出せば、ライバルが少ない分、頭角を現すことができると思う。先輩にもかわいがってもらえるし。 C氏 大手外食チェーン店でも離職率は高い。それだけ飲食業界で働くことは、根性がいるのだと思う。しかし一方で、ラーメン業界はやる気さえあれば、一般の企業よりも独立できるチャンスははるかに大きい。せっかく繁盛店で働く機会を得たのだから、その店の技術を貪欲に学んで独立を目指してほしいと思う。 Webメディアの活用も不可欠 司会 メディアの活用については? いまでも集客パワーがある? A氏 雑誌に載るのは有難いことだが、それで集客数が増えるという時代ではない。お客も情報過多に飽きている。 B氏 テレビは反響があるが、その期間は以前よりかなり短くなっていると思う。放送されて数日間は客数がドーンと増えるが、それもすぐに終わる。一過性が年々強まっている。 C氏 昔は、ラーメン評論家と呼ばれる人たちの評価が影響力を持っていたが、今は「食ベログ」などで一般の人たちが書いたコメントの方が影響力があるように思う。知り合いの店も皆、そう感じている。 A氏 ぼくは「食ベログ」は見ないことにしている。接客についてのコメントは反省点として参考にするが、味についての批評は読まない。新しい味に挑戦したくて出した限定メニューに批判的なコメントがあると、気持ちが萎縮して、自分が作りたいものが作れないこともある。臆病といわれても仕方ないが。 B氏 「「食ベログ」のコメントよりも店の常連さんの評価の方が参考になる。とくに、いつもとの違いを指摘されると。 C氏 facebook も影響力が大きい。口コミの最先端だと思う。 B氏 がテーブルに来たら、食べる前にまず写真を撮る。以前は、冷めるから早く食べてほしいと思ったこともあるが、今は何とも思わない。むしろ、facebookにアップしてくれるのであれば、宣伝になるのでありがたいと思う。都合のよい希望ではあるが。 A氏 facebook やツイッターは見た人の反応が早いから、利用次第では宣伝ツールになり得るかもしれない。ラーメン業界でも勉強する機運が高まっている。 B氏 いいことを書いてくれればいいが、いわれのないことを書かれるのは困る。それが勝手に一人歩きして広まることもある。諸刃の剣は否めない。 C氏 昔はそういう中傷に左右されることもあったが、今は見る側にも匿名のコメントの信ぴょう性を見極める目がある。批判的なコメントがアップしても、それは客数に大きく影響することはない。実際のお客はもっと賢い。 B氏 店のホームページでラーメンではなく寸胴の写真をアップしたら反響があった。完成したラーメンを見せるよりも、裏方の方が興味をひくのかもしれない。作っているところを動画で紹介するというのもひとつの宣伝方法だと思う。いずれにせよ、我々自身が新しいメディアをもっと活用すべき。 サイドメニューは丼物やカレ ーなどご飯物が根強い 司会 最近のサイドメニューのトレンドは? B氏 チャーシューや唐揚げなど肉系は、やはり引きになる。サイドメニューまで注文してくれると売上げ的にはありがたい。手軽で原価も低いし。 C氏 サイドメニューではないが、コメをいいものに変えたらライスがよく出るようになった。「ご飯がおいしい」というのは分かりやすいのだと思う。やはり日本人だから。 A氏 近所の家系の店がライス無料にしたら、まわりで無料にする店が増えた。自分は追随するのが嫌だったので、チャーシューエッグ丼200円というご飯物のサイドメニューを作ったら評判がいい。付加価値はやはり大切。 B氏 サイドメニューの値段設定は200円が手ごろ。自販機に1000円札を入れて、ラーメンとサイドメニューのチケットを買って、100円程度のおつりが出てくるくらいがいい。 C氏 カレーもいいと思う。ラーメンのスープで作るカレーをまかないで出すことがある。ラーメン店ならではのカレーは、単純で分かりやすいし、話題的にもユニーク。意外に有望株? A氏 サイドメニューはあくまでもサブ。サイドメニュー目当てで来店するお客さんはいないので、うまいラーメンを作り続けることが基本だ。 A・B・C氏 それが一番難しい! A氏(39歳) 2004年開業。メーン商品は豚骨しょうゆラーメン。濃厚豚骨スープと自家製麺が特徴。自身もラーメンオタクで全国のラーメンを食べ歩く。 B氏(38歳) 2000年開業。「煮干しが効いた醤油ベースのスープ」「極太麺」「背脂」が特徴。現在、都内に3店舗を経営。 C氏(35歳) 2000年開業。家系ラーメン店。都内にラーメン店、定食屋など10軒を経営。創業12年の本店は地元の人に愛される“思い出のラーメン”。あたらしい視点でラーメンを伝える情報誌!