1週間のカリキュラムでプロを育成

国内は言うに及ばず、世界中からラーメン店開業を目指す人たちが、指導を仰ぐ藤井薫氏。その経歴はユニークだ。川崎重工業で飛行機を設計していたが、37年前に独立。機械の製造販売会社を設立するが、やがて製麺機に特化し、小型製麺機で業界トップに駆け上る。さらに麺店経営に関心を持ち、ついに麺学校を開校。一風堂の河原成美氏も「藤井さんの門を、これから開業する人たちはぜひともたたいてほしい」と絶賛し、「麺業界の影の指南役」と称される藤井氏が語る繁盛するラーメン店とは?

勘とは逆の数値的アプローチ
経営者に求められる一番の素質は〝素直さ〟

──麺学校、開校のきっかけは?
藤井 私が製麺機の製造販売を始めたころのお客さんは麺作りのプロばかり。「麺の打ち方を教えましょうか?」なんて言ったら「バカにするな!」と怒られる時代でした。
それが十数年前くらいから、飲食業の経験がなくても、麺店経営を始める人が増えてきました。麺の打ち方はもちろん、だしのとり方も、スープの作り方も知らない。あるのは「店を繁盛させたい」という夢だけ。
ちょうどそのころ、私は、当社の使命は製麺機を販売するだけはなく、機械を買ってくださったお客さまのお店の繁盛を支援することにあると考えるようになっていました。そこで、うどん学校を13年前、ラーメン学校を8年前に開校したというわけです。

──学校の特徴は?
藤井 「短期間でプロにする」ことに尽きます。まったくの素人からスタートして、ラーメンなら1週間のカリキュラムで開業できるまでに育成します。「短時間」にこだわるのは、人間が持っている資源の中で一番大切なものが「時間」だからです。お金は失っても、頑張って働けばまた手にすることができる。しかし、時間は戻ってきません。「人生の時間のロスをなくす」ことが、本校の指導理念です。

──短時間で修得できる理由は?
藤井 職人気質の料理人は、長年培った勘によって味を再現します。この勘を身に付けるには一朝一夕にはいきません。長い修業を要します。
そこで、考えたのが「デジタルクッキング」。私はもともと理系出身ですから、勘とは逆の数値的アプローチで、同じ味をブレずに、何度でも再現できるようにしようと考えたわけです。材料はすべて0・1g単位で計り、甘さや辛さは塩度計や濃度計などで計測するので、かなり正確なレシピを作ることができます。受講生はそのレシピを持ち帰り、同じ味を再現できます。基本は徹底的に教えますので、あとはそれぞれのオリジナリティーで自分の味を作ればいいわけです。

──受講生は全国から?
藤井
 日本国内はもちろん、ヨーロッパ、北米、南米、韓国、東南アジアなど世界中から集まっています。今や受講生の2割が外国人です。本校では、通訳のアテンドもしていますから、日本語がわからなくても問題はありません。数値化したデジタルクッキングで教えていることも、グローバル化を容易にしている要因だと思います。
うどん、そば、ラーメンを合わせて、外国人の卒業生は200人は超えているでしょうね。その中でも一番多いのはラーメンです。

──経営者に求められる資質は?
藤井
 店が成功するか否かは、経営者の考え方ひとつで決まると言っても過言ではありません。本校では、1週間の受講期間のうち経営者としての心構えやマネジメントを2日間かけて講義しています。
一番大切な資質は「素直さ」ですね。経営者として成功するには、師の教えをモデリング(手本)する→モディファイ(修正)する→イノベーション(革新)するという段階を経ますが、素直でないと最初のモデリングでつまづいてしまいますから。素直さがある人は、吸収するスピードが早いですね。

──ラーメン業界の発展は?
藤井
 ラーメンのグローバル化はどんどん進行しています。その理由は、スープにしろ、具材にしろ、過去の延長線から飛び出したイノベーションが可能なのがラーメンだからです。それがグローバル化をけん引しているんですね。たとえば、英国の受講生は「オーガニックラーメンを作りたい」という。日本人にはない発想です。また、本校では海外の受講生には自国の調味料を持参してもらっています。帰国して開業するなら、その国の調味料を使った、その国のラーメンでないと通用しません。そこでまた新しい味のラーメンが誕生する。グローバル化の進行とともに、ラーメンのイノベーションも起こるという循環が、今、ラーメン業界で起こっているのです。


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【藤井氏が注目するラーメン店経営者】黒木 直人 氏

「饗 くろき」(東京都) 店主
料理に対する姿勢が真摯
「和食の名店で修業を積んだということもあり、料理に対する姿勢が非常に真摯です。料理職人としても、ひとりの人間としても卓越した人物です。大和製作所の製麺機のユーザーさんでもあります」


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【藤井氏が注目するラーメン店経営者】生田 智志 氏

「ラーメン 凪」(東京都、他)店主
成功する素質をすべて持つ
「生田さんは、『凪』がすでに成功してから本校で受講されました。素直な人柄のあらわれでしょうね。非常に熱心でバイタリティーあふれる方です。成功する素質をすべて備えています」


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【藤井氏が注目するラーメン店経営者】塚田 兼司 氏

「気むずかし家」(長野県)、「魚雷」(東京都)店主
人のために活動する心意気
「彼の人間性も素晴らしい。プラス思考で、研究熱心です。自分のビジネス成功よりも、人の役に立つことのために活動するという心意気があり、人望も厚いですね」


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ラーメンのグローバル化が加速 受講生の2割は外国人

ラーメン職人の調理技術を数値に置き換えて分かりやすく講義

(株)大和製作所
所在地=本社・香川県綾歌郡宇多津町浜三番丁37番4、
東京スタジオ・東京都品川区北品川一丁目8番11号/創業=1975年/資本金=9,000万円/事業内容=生麺機の製造販売、
麺専門店経営・店舗運営相談・新規開業トータルプロデュース事業、うどん・ラーメン・そば学校の運営


藤井 薫(ふじい・かおる)

DDTl84da_VL063_r01航空機の設計から麺学校の校長に
1948年香川県坂出市生まれ。
高校卒業後、川崎重工業(株)に入社し、航空機事業部機体設計課に配属。その後、独立し、1975年大和製作所を創業。当初は機械全般の製造販売を行っていたが、香川という土地柄、製麺機の受注が多く、製麺機に特化するようになる。現在、小型製麺機の販売台数は業界トップシェア。製麺機の販売を通して、麺専門店経営にも関心をもち、独自に研究。そこで得たノウハウをもとに2000年にうどん学校、2004年にラーメンとそばの学校を開校。著書の『トップになりたきゃ、競争するな』(こう書房)など。

adminコラム1週間のカリキュラムでプロを育成 国内は言うに及ばず、世界中からラーメン店開業を目指す人たちが、指導を仰ぐ藤井薫氏。その経歴はユニークだ。川崎重工業で飛行機を設計していたが、37年前に独立。機械の製造販売会社を設立するが、やがて製麺機に特化し、小型製麺機で業界トップに駆け上る。さらに麺店経営に関心を持ち、ついに麺学校を開校。一風堂の河原成美氏も「藤井さんの門を、これから開業する人たちはぜひともたたいてほしい」と絶賛し、「麺業界の影の指南役」と称される藤井氏が語る繁盛するラーメン店とは? 勘とは逆の数値的アプローチ 経営者に求められる一番の素質は〝素直さ〟 ──麺学校、開校のきっかけは? 藤井 私が製麺機の製造販売を始めたころのお客さんは麺作りのプロばかり。「麺の打ち方を教えましょうか?」なんて言ったら「バカにするな!」と怒られる時代でした。 それが十数年前くらいから、飲食業の経験がなくても、麺店経営を始める人が増えてきました。麺の打ち方はもちろん、だしのとり方も、スープの作り方も知らない。あるのは「店を繁盛させたい」という夢だけ。 ちょうどそのころ、私は、当社の使命は製麺機を販売するだけはなく、機械を買ってくださったお客さまのお店の繁盛を支援することにあると考えるようになっていました。そこで、うどん学校を13年前、ラーメン学校を8年前に開校したというわけです。 ──学校の特徴は? 藤井 「短期間でプロにする」ことに尽きます。まったくの素人からスタートして、ラーメンなら1週間のカリキュラムで開業できるまでに育成します。「短時間」にこだわるのは、人間が持っている資源の中で一番大切なものが「時間」だからです。お金は失っても、頑張って働けばまた手にすることができる。しかし、時間は戻ってきません。「人生の時間のロスをなくす」ことが、本校の指導理念です。 ──短時間で修得できる理由は? 藤井 職人気質の料理人は、長年培った勘によって味を再現します。この勘を身に付けるには一朝一夕にはいきません。長い修業を要します。 そこで、考えたのが「デジタルクッキング」。私はもともと理系出身ですから、勘とは逆の数値的アプローチで、同じ味をブレずに、何度でも再現できるようにしようと考えたわけです。材料はすべて0・1g単位で計り、甘さや辛さは塩度計や濃度計などで計測するので、かなり正確なレシピを作ることができます。受講生はそのレシピを持ち帰り、同じ味を再現できます。基本は徹底的に教えますので、あとはそれぞれのオリジナリティーで自分の味を作ればいいわけです。 ──受講生は全国から? 藤井 日本国内はもちろん、ヨーロッパ、北米、南米、韓国、東南アジアなど世界中から集まっています。今や受講生の2割が外国人です。本校では、通訳のアテンドもしていますから、日本語がわからなくても問題はありません。数値化したデジタルクッキングで教えていることも、グローバル化を容易にしている要因だと思います。 うどん、そば、ラーメンを合わせて、外国人の卒業生は200人は超えているでしょうね。その中でも一番多いのはラーメンです。 ──経営者に求められる資質は? 藤井 店が成功するか否かは、経営者の考え方ひとつで決まると言っても過言ではありません。本校では、1週間の受講期間のうち経営者としての心構えやマネジメントを2日間かけて講義しています。 一番大切な資質は「素直さ」ですね。経営者として成功するには、師の教えをモデリング(手本)する→モディファイ(修正)する→イノベーション(革新)するという段階を経ますが、素直でないと最初のモデリングでつまづいてしまいますから。素直さがある人は、吸収するスピードが早いですね。 ──ラーメン業界の発展は? 藤井 ラーメンのグローバル化はどんどん進行しています。その理由は、スープにしろ、具材にしろ、過去の延長線から飛び出したイノベーションが可能なのがラーメンだからです。それがグローバル化をけん引しているんですね。たとえば、英国の受講生は「オーガニックラーメンを作りたい」という。日本人にはない発想です。また、本校では海外の受講生には自国の調味料を持参してもらっています。帰国して開業するなら、その国の調味料を使った、その国のラーメンでないと通用しません。そこでまた新しい味のラーメンが誕生する。グローバル化の進行とともに、ラーメンのイノベーションも起こるという循環が、今、ラーメン業界で起こっているのです。 【藤井氏が注目するラーメン店経営者】黒木 直人 氏 「饗 くろき」(東京都) 店主 料理に対する姿勢が真摯 「和食の名店で修業を積んだということもあり、料理に対する姿勢が非常に真摯です。料理職人としても、ひとりの人間としても卓越した人物です。大和製作所の製麺機のユーザーさんでもあります」 【藤井氏が注目するラーメン店経営者】生田 智志 氏 「ラーメン 凪」(東京都、他)店主 成功する素質をすべて持つ 「生田さんは、『凪』がすでに成功してから本校で受講されました。素直な人柄のあらわれでしょうね。非常に熱心でバイタリティーあふれる方です。成功する素質をすべて備えています」 【藤井氏が注目するラーメン店経営者】塚田 兼司 氏 「気むずかし家」(長野県)、「魚雷」(東京都)店主 人のために活動する心意気 「彼の人間性も素晴らしい。プラス思考で、研究熱心です。自分のビジネス成功よりも、人の役に立つことのために活動するという心意気があり、人望も厚いですね」 ラーメンのグローバル化が加速 受講生の2割は外国人 ラーメン職人の調理技術を数値に置き換えて分かりやすく講義 (株)大和製作所 所在地=本社・香川県綾歌郡宇多津町浜三番丁37番4、 東京スタジオ・東京都品川区北品川一丁目8番11号/創業=1975年/資本金=9,000万円/事業内容=生麺機の製造販売、 麺専門店経営・店舗運営相談・新規開業トータルプロデュース事業、うどん・ラーメン・そば学校の運営 藤井 薫(ふじい・かおる) 航空機の設計から麺学校の校長に 1948年香川県坂出市生まれ。 高校卒業後、川崎重工業(株)に入社し、航空機事業部機体設計課に配属。その後、独立し、1975年大和製作所を創業。当初は機械全般の製造販売を行っていたが、香川という土地柄、製麺機の受注が多く、製麺機に特化するようになる。現在、小型製麺機の販売台数は業界トップシェア。製麺機の販売を通して、麺専門店経営にも関心をもち、独自に研究。そこで得たノウハウをもとに2000年にうどん学校、2004年にラーメンとそばの学校を開校。著書の『トップになりたきゃ、競争するな』(こう書房)など。あたらしい視点でラーメンを伝える情報誌!