女性目線はスペックにあらず

本谷亜紀氏の著書『日本初の「女性ラーメン評論家」になっちゃいました』(扶桑社)が、発売以来、部数を伸ばしている。本谷氏は、一見、〝男性食〟と思われがちなラーメンを女性の視点から分析し「女子だってラーメンが好きでいいじゃないか!」と主張する。素材や味の構成についての薀蓄(うんちく)を語ることが多い、これまでのラーメン本とは異なり、女性らしい、しなやかな感性で書かれたラーメン評が、本著が注目を集める理由だろう。男性諸氏に勝るとも劣らない〝ラーメン愛〟を本谷氏にうかがった。

男性評を分かりやすく翻訳

まずは雰囲気、清潔、接客の三拍子

──ラーメンとの出合いは?
本谷
 父親がラーメン好きで、子どものころから家族でよくラーメンを食べに行っていました。自分で本格的に食べ始めたのが高1から。当時通っていた予備校がラーメン激戦区の池袋にあったので、ラーメンにどんどんハマっていきましたね。そのころよく行っていたのが「屯ちん」「無敵屋」「麺屋ごとう」。食べ盛りの高校生でしたから、屯ちんさんの背脂たっぷりのガッツリ系にはハマりました。しかも大盛、中盛、並盛が同価格なのも魅力的。行列にもよく並びましたね。

──「ラーメン女子大生」と呼ばれるようになったのは?
本谷
 女子大に入学して「ラーメンサークル」を作りました。サークルのメンバーは女子だけで、気が付いたらメーリングリストの登録者数が40〜50人にもなっていました。女子って、一人でラーメンを食べに行くのは恥ずかしいと思う人が多くて、私がこれまでの経験を生かしてリーダーになり、みんなと一緒に食べ歩きをするのがサークルの活動。そして、大学3年のときに、テレビ朝日の『お願い!ランキング』で募集していたラーメンレポーターに応募して合格したのが、この仕事を始めるきっかけですね。

──ラーメン好きの女性は多い?
本谷
 ラーメンサークルも、最初はサークルというより、仲のいい女子の友達と大学の帰りにラーメンを食べに行っていたら、そのメンバーがどんどん増えていって……。私以外の女子も、ラーメンに興味があるんだという発見でしたね。

──ラーメン評論をするようになったのは?
本谷
 ラーメンに関する女性のオピニオンリーダーが、どうしていないんだろうとずーっと思っていました。ラーメン本や雑誌に掲載されている記事を読むと、やはりどこか男性目線で書かれていて、私が求めている情報ではないな〜と。私以外にも同じように感じている女性が結構いて、それなら自分でラーメン情報を発信しようと思ったわけです。

──男性目線とは?
本谷
 男性ってスペックが好きですよね。どこどこ産の煮干しとか、製麺所はどこだとか、麺の加水率とか。男性のラーメンフリークにはウケても、女性はスペックを並べられてもピンとこない。スペックをかみ砕いて、ラーメン初心者の女性にもわかるように〝翻訳〟するのが、私のラーメン評だと思っています。
女性は雰囲気でお店を選びます。女性がカフェでよく食事をするのは、くつろげる雰囲気が好きだからでしょうね。私は、わかりやすい味の説明、お店の雰囲気、清潔感、接客などをトータルで紹介するラーメン評論を目指したいと思っています。女性誌の仕事の依頼が増えていますから、女性もラーメン店に行きたいし、ラーメン情報を求めるんですね。

──女性が求めるラーメン店とは?
本谷
 「ラーメン屋は汚い店の方がおいしいんだ」という格言のようなものもありますよね。でも女性には通用しないと思います。清潔感があり、接客がよいお店なら、女子が一人でラーメン店に入るハードルはかなり低くなると思います。
外食産業は女性を取り込まないと成立しません。それはラーメン店も例外ではなく、女性の満足度を高めることを意識したラーメン店がかなり増えてきていますね。たとえば、カフェを思わせるような店内レイアウトだったり、サイドメニューに本格的なデザートがあったり、おつまみが充実していて、おしゃべりしながらゆっくり食べられたりとか。
ガッツリ食べる女性も少なくないですが、そこまで食べられない人のために、半量の麺を注文できるというのも女性にはうれしい。あと、女性は価格にシビアなので、どんなに高級な素材を使っていても高すぎるものは引いてしまうかも。女性のニーズを満足させることができるお店ならこれから盛り上がっていくと私は思いますね。


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『日本初の「女性ラーメン評論家」になっちゃいました』(扶桑社)

「コトバが出ないほどウマイ!5軒」「今日はガッツリ食べたい日の5軒」「舌も心も癒やされる5軒」など、その日の気分やシチュエーション別に、身近な人や大切な人と一緒に「おいしい!」を共有できるラーメン店が紹介されている。これまでのラーメン評とは趣を異にするみずみずしい文章で、読者があたかもその店を訪れ、ラーメンを食べたかのような気分になれる。


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本谷亜紀氏が今注目しているラーメン店 虎嘯ら〜麺(1,000円)

長年の接客ノウハウに敬服
麺屋武蔵 虎嘯
東京都港区六本木4─12─6
麺屋武蔵の13番目の系列店。創業店の「麺屋武蔵 青山」を再現し、さらにブラッシュアップさせている。「マニアの人が見たら、この武蔵は女性向けかな? と思う人もいるかもしれませんが、やはり長年やっているお店の接客ノウハウは、女性、男性関係なく気持ちがいいですね」(本谷)


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本谷亜紀氏が今注目しているラーメン店 ととこしょうゆラーメン(700円)

味も清潔感も完璧 
麺ダイニングととこ
東京都千代田区神田小川町3─10─9 斉藤ビル1F
「ととこ」とは山形弁で「鶏」という意味。山形の食材にこだわり、自家製だしも醤油も山形産。山形の郷土料理も提供している。「清潔感は完璧。味も言うことなし。何より女将の優しさが心にしみ、これほど心が温まるラーメン店はありませんね」(本谷)


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本谷亜紀氏が今注目しているラーメン店 支那そば(750円)

丁寧かつ大きめに感動
支那そば いしはら 西荻窪
東京都杉並区西荻北3─22─22 第七フロントビル1F
店主は、浜田山の老舗「たんたん亭」の創業者。丁寧にとった魚のだしが特徴。あんが大きめのワンタンも店の看板のひとつ。「『もうすぐ店をたたんでしまうから』と、おっしゃっていましたが、まだまだ営業中なようですね。学生時代によく通いました」(本谷)


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本谷 亜紀(ほんや・あき)

1988年埼玉県出身。
ラーメン好きの父親に連れられて、子どものころからラーメン店を食べ歩く。大学入学後、ラーメンサークル、通称“ラーサー”を立ち上げ、女子大生40〜50人のサークル員を集める。在学中にテレビ朝日『お願い!ランキング』で“ラーメン女子大生”として評論家デビュー。大学卒業後、さらに活動を本格化させ、フジテレビ『笑っていい』などのテレビ出演や、集英社『グランドジャンプ』他の雑誌の連載など幅広く活躍中。年間350杯、累計2,500杯を食べる。

adminコラム女性目線はスペックにあらず 本谷亜紀氏の著書『日本初の「女性ラーメン評論家」になっちゃいました』(扶桑社)が、発売以来、部数を伸ばしている。本谷氏は、一見、〝男性食〟と思われがちなラーメンを女性の視点から分析し「女子だってラーメンが好きでいいじゃないか!」と主張する。素材や味の構成についての薀蓄(うんちく)を語ることが多い、これまでのラーメン本とは異なり、女性らしい、しなやかな感性で書かれたラーメン評が、本著が注目を集める理由だろう。男性諸氏に勝るとも劣らない〝ラーメン愛〟を本谷氏にうかがった。 男性評を分かりやすく翻訳 まずは雰囲気、清潔、接客の三拍子 ──ラーメンとの出合いは? 本谷 父親がラーメン好きで、子どものころから家族でよくラーメンを食べに行っていました。自分で本格的に食べ始めたのが高1から。当時通っていた予備校がラーメン激戦区の池袋にあったので、ラーメンにどんどんハマっていきましたね。そのころよく行っていたのが「屯ちん」「無敵屋」「麺屋ごとう」。食べ盛りの高校生でしたから、屯ちんさんの背脂たっぷりのガッツリ系にはハマりました。しかも大盛、中盛、並盛が同価格なのも魅力的。行列にもよく並びましたね。 ──「ラーメン女子大生」と呼ばれるようになったのは? 本谷 女子大に入学して「ラーメンサークル」を作りました。サークルのメンバーは女子だけで、気が付いたらメーリングリストの登録者数が40〜50人にもなっていました。女子って、一人でラーメンを食べに行くのは恥ずかしいと思う人が多くて、私がこれまでの経験を生かしてリーダーになり、みんなと一緒に食べ歩きをするのがサークルの活動。そして、大学3年のときに、テレビ朝日の『お願い!ランキング』で募集していたラーメンレポーターに応募して合格したのが、この仕事を始めるきっかけですね。 ──ラーメン好きの女性は多い? 本谷 ラーメンサークルも、最初はサークルというより、仲のいい女子の友達と大学の帰りにラーメンを食べに行っていたら、そのメンバーがどんどん増えていって……。私以外の女子も、ラーメンに興味があるんだという発見でしたね。 ──ラーメン評論をするようになったのは? 本谷 ラーメンに関する女性のオピニオンリーダーが、どうしていないんだろうとずーっと思っていました。ラーメン本や雑誌に掲載されている記事を読むと、やはりどこか男性目線で書かれていて、私が求めている情報ではないな〜と。私以外にも同じように感じている女性が結構いて、それなら自分でラーメン情報を発信しようと思ったわけです。 ──男性目線とは? 本谷 男性ってスペックが好きですよね。どこどこ産の煮干しとか、製麺所はどこだとか、麺の加水率とか。男性のラーメンフリークにはウケても、女性はスペックを並べられてもピンとこない。スペックをかみ砕いて、ラーメン初心者の女性にもわかるように〝翻訳〟するのが、私のラーメン評だと思っています。 女性は雰囲気でお店を選びます。女性がカフェでよく食事をするのは、くつろげる雰囲気が好きだからでしょうね。私は、わかりやすい味の説明、お店の雰囲気、清潔感、接客などをトータルで紹介するラーメン評論を目指したいと思っています。女性誌の仕事の依頼が増えていますから、女性もラーメン店に行きたいし、ラーメン情報を求めるんですね。 ──女性が求めるラーメン店とは? 本谷 「ラーメン屋は汚い店の方がおいしいんだ」という格言のようなものもありますよね。でも女性には通用しないと思います。清潔感があり、接客がよいお店なら、女子が一人でラーメン店に入るハードルはかなり低くなると思います。 外食産業は女性を取り込まないと成立しません。それはラーメン店も例外ではなく、女性の満足度を高めることを意識したラーメン店がかなり増えてきていますね。たとえば、カフェを思わせるような店内レイアウトだったり、サイドメニューに本格的なデザートがあったり、おつまみが充実していて、おしゃべりしながらゆっくり食べられたりとか。 ガッツリ食べる女性も少なくないですが、そこまで食べられない人のために、半量の麺を注文できるというのも女性にはうれしい。あと、女性は価格にシビアなので、どんなに高級な素材を使っていても高すぎるものは引いてしまうかも。女性のニーズを満足させることができるお店ならこれから盛り上がっていくと私は思いますね。 『日本初の「女性ラーメン評論家」になっちゃいました』(扶桑社) 「コトバが出ないほどウマイ!5軒」「今日はガッツリ食べたい日の5軒」「舌も心も癒やされる5軒」など、その日の気分やシチュエーション別に、身近な人や大切な人と一緒に「おいしい!」を共有できるラーメン店が紹介されている。これまでのラーメン評とは趣を異にするみずみずしい文章で、読者があたかもその店を訪れ、ラーメンを食べたかのような気分になれる。 本谷亜紀氏が今注目しているラーメン店 虎嘯ら〜麺(1,000円) 長年の接客ノウハウに敬服 麺屋武蔵 虎嘯 東京都港区六本木4─12─6 麺屋武蔵の13番目の系列店。創業店の「麺屋武蔵 青山」を再現し、さらにブラッシュアップさせている。「マニアの人が見たら、この武蔵は女性向けかな? と思う人もいるかもしれませんが、やはり長年やっているお店の接客ノウハウは、女性、男性関係なく気持ちがいいですね」(本谷) 本谷亜紀氏が今注目しているラーメン店 ととこしょうゆラーメン(700円) 味も清潔感も完璧  麺ダイニングととこ 東京都千代田区神田小川町3─10─9 斉藤ビル1F 「ととこ」とは山形弁で「鶏」という意味。山形の食材にこだわり、自家製だしも醤油も山形産。山形の郷土料理も提供している。「清潔感は完璧。味も言うことなし。何より女将の優しさが心にしみ、これほど心が温まるラーメン店はありませんね」(本谷) 本谷亜紀氏が今注目しているラーメン店 支那そば(750円) 丁寧かつ大きめに感動 支那そば いしはら 西荻窪 東京都杉並区西荻北3─22─22 第七フロントビル1F 店主は、浜田山の老舗「たんたん亭」の創業者。丁寧にとった魚のだしが特徴。あんが大きめのワンタンも店の看板のひとつ。「『もうすぐ店をたたんでしまうから』と、おっしゃっていましたが、まだまだ営業中なようですね。学生時代によく通いました」(本谷) 本谷 亜紀(ほんや・あき) 1988年埼玉県出身。 ラーメン好きの父親に連れられて、子どものころからラーメン店を食べ歩く。大学入学後、ラーメンサークル、通称“ラーサー”を立ち上げ、女子大生40〜50人のサークル員を集める。在学中にテレビ朝日『お願い!ランキング』で“ラーメン女子大生”として評論家デビュー。大学卒業後、さらに活動を本格化させ、フジテレビ『笑っていい』などのテレビ出演や、集英社『グランドジャンプ』他の雑誌の連載など幅広く活躍中。年間350杯、累計2,500杯を食べる。あたらしい視点でラーメンを伝える情報誌!