製麺会社だからこそ見えるラーメン市場

消費税アップで激変する勢力図
麻生の創業は1974年。創業65年の製麺会社の老舗だ。製麺会社とラーメン店は、いわば運命共同体。麺を卸しているラーメン店が繁盛するか否かは、自社の売上げに直結する。だからこそ、ラーメン店1軒1軒の要望に真摯に耳を傾け、各店のスープに合ったオリジナル麺を提供することが社命である。ラーメン店の厨房事情を知り尽くし、長年、ラーメン業界とともに歩んできた麻生政雄社長が描くラーメンの展望とは?

〝ブレない独自の味が健闘

 ──製麺会社から見て、好調なラーメンは?
麻生 ここ1年、首都圏のラーメン店数千軒を回りましたが、勢いがあるのは1番が豚骨醤油、2番が二郎系、3番はつけ麺です。豚骨醤油の店の中でも、私がすごいなと思ったのが、池袋の有名な豚骨醤油の店。ここは365日、ほぼ毎日行列ができている。真夏の気温35度の炎天下の中でもお客が並んでいます。大々的に宣伝しているわけでもないのに、その人気は絶大。あれもこれもに手を出さず、開店以来のブレない味を地道に作り続けている店は強いですね。

 ──今後の動きは?
麻生 消費税アップの影響は大きい。コスト努力で価格を据え置く店と、値上げする店に二分されるでしょう。値上げなら50円アップが妥当。でも、700~800円のラーメンで50円アップはインパクトが大きい。値上げする店はそれに見合う付加価値が必要になるでしょう。
 ──厳しい店も出てくる?
麻生 固定コスト(賃料)の高い都内一等地の店は、相当繁盛しなければ厳しいでしょう。なのでリスクを回避して、郊外や地方で経営していく手もあると思います。1日100食でも十分やっていけますからね。その意味ではローカルトレンドに注目しています。

付加価値アップと安値圧力の攻防

 ──外食産業全般については?
麻生 製麺業界にかかわらず、外食市場はかなり厳しい。原因は、いつまでたっても上向かない景気に尽きます。会社が儲からなければ、給料が上がらない。そこで人々は節約のために〝内食化〟に向かう。つまり外食市場のライバルはコンビニやスーパーとなる。だから店同士で争っている場合じゃない。むしろ店同士がスクラムを組んで、外食市場を盛り上げていく必要がありますね。

店主との信頼関係が明暗を分ける

 ──製麺業界も厳しい?
 麻生 正確なデータではありませんが、製麺会社はここ20年間でほぼ半減したんじゃないかな。横綱、大関クラスの大手数社と、その他大勢の十両以下に二分されたのでは。消費税アップで外食市場の売上げが減れば、麺の需要も減る。小さくなったパイを取り合うわけですから、今後、生き残りを賭けた熾烈な争いが展開されるでしょうね。

〝人間力育成〟が急務

 ──生き残りのカギは?
 麻生 付加価値アップと低価格訴求が分岐点となります。そもそも製麺会社は麺作りの代行業ですから、指定品質と安定供給を踏まえた現行価格は適正なはずです。しかし、それらを無視して安値を要求する店が増えているのも事実。先ほど言った十両以下、つまり小規模の〝製麺所〟なら値下げをしても、何とかやっていけるでしょう。でも、多くの従業員を抱える〝製麺企業〟はそうはいきません。良質の商品をより安く提供することは大切ですが、企業としては価格以外の面で付加価値を付けていくことが、競争を勝ち抜くカギになります。その一つが研究開発力。新規開拓営業には新提案が不可欠。それができるか否か、各社の研究開発力にかかっています。〝食の安全〟の確保も重要です。衛生管理を徹底した工場設備が求められます。そしてなにより〝人間力〟が重要です。

 ──人間力とは?
麻生 どんな繁盛店も、必ず壁にぶつかります。ラーメン店の店主は、独立心が強いだけに〝一匹狼〟的な人が多く、一人で悩みを抱えることも少なくない。そうした状況を敏感に察知して、親身になって相談に乗れる営業マンが必要なのです。それには経験に基づく確かな知識、リサーチ力、分析力、提案力、そして店主との信頼関係を築ける人間性が求められます。その人間力育成に向け日々努めています。


麻生氏による今後、業界をけん引するベスト3ラーメン

※写真はイメージ。麻生とは無関係です

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1位 豚骨醤油

男性から圧倒的な支持を受ける。冬場はもちろんラーメンが敬遠されがちな夏場も、濃いめの味が受け入れられる。やや薄味の豚骨醤油ラーメンも人気。


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2位 二郎系

ガッツリ系ラーメンの人気は20~30代の男子に根強い。消費税アップで値段が上がった分、麺量や具材が多く、オイリーで食べ応えのある二郎系はお得感がある。


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3位 つけ麺

麺量はたとえば普通盛り240g、大盛り360g、特盛り480gを同価格で提供する店が支持されている。ランチタイムはライス無料にするなどのサービスも人気。スダチを添えて味に変化を出すなどの付加価値もポイント。


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麻生 政雄(あそう・まさお)

1947年神奈川県平塚市出身。
麻生氏の母親が始めた製麺所をもとに47年、㈲麻生を設立し中華麺、ギョウザの皮の製造・卸を開始。90年、㈱麻生に社名変更し業務用食材の卸業務を強化。麻生氏は19歳から家業を手伝い、25歳から経営を指揮する。顧客のニーズに合ったオリジナル麺を開発し続ける。

㈱麻生

本社所在地=神奈川県平塚市東豊田480─17/事業内容=(1)生麺、揚げ麺、皮(ギョウザ、ワンタン、シュウマイ)の製造(2)顧客PB商品の製造(3)業務用中華食材の卸業務

adminコラム製麺会社だからこそ見えるラーメン市場 消費税アップで激変する勢力図 麻生の創業は1974年。創業65年の製麺会社の老舗だ。製麺会社とラーメン店は、いわば運命共同体。麺を卸しているラーメン店が繁盛するか否かは、自社の売上げに直結する。だからこそ、ラーメン店1軒1軒の要望に真摯に耳を傾け、各店のスープに合ったオリジナル麺を提供することが社命である。ラーメン店の厨房事情を知り尽くし、長年、ラーメン業界とともに歩んできた麻生政雄社長が描くラーメンの展望とは? 〝ブレない独自の味が健闘  ──製麺会社から見て、好調なラーメンは? 麻生 ここ1年、首都圏のラーメン店数千軒を回りましたが、勢いがあるのは1番が豚骨醤油、2番が二郎系、3番はつけ麺です。豚骨醤油の店の中でも、私がすごいなと思ったのが、池袋の有名な豚骨醤油の店。ここは365日、ほぼ毎日行列ができている。真夏の気温35度の炎天下の中でもお客が並んでいます。大々的に宣伝しているわけでもないのに、その人気は絶大。あれもこれもに手を出さず、開店以来のブレない味を地道に作り続けている店は強いですね。  ──今後の動きは? 麻生 消費税アップの影響は大きい。コスト努力で価格を据え置く店と、値上げする店に二分されるでしょう。値上げなら50円アップが妥当。でも、700~800円のラーメンで50円アップはインパクトが大きい。値上げする店はそれに見合う付加価値が必要になるでしょう。  ──厳しい店も出てくる? 麻生 固定コスト(賃料)の高い都内一等地の店は、相当繁盛しなければ厳しいでしょう。なのでリスクを回避して、郊外や地方で経営していく手もあると思います。1日100食でも十分やっていけますからね。その意味ではローカルトレンドに注目しています。 付加価値アップと安値圧力の攻防  ──外食産業全般については? 麻生 製麺業界にかかわらず、外食市場はかなり厳しい。原因は、いつまでたっても上向かない景気に尽きます。会社が儲からなければ、給料が上がらない。そこで人々は節約のために〝内食化〟に向かう。つまり外食市場のライバルはコンビニやスーパーとなる。だから店同士で争っている場合じゃない。むしろ店同士がスクラムを組んで、外食市場を盛り上げていく必要がありますね。 店主との信頼関係が明暗を分ける  ──製麺業界も厳しい?  麻生 正確なデータではありませんが、製麺会社はここ20年間でほぼ半減したんじゃないかな。横綱、大関クラスの大手数社と、その他大勢の十両以下に二分されたのでは。消費税アップで外食市場の売上げが減れば、麺の需要も減る。小さくなったパイを取り合うわけですから、今後、生き残りを賭けた熾烈な争いが展開されるでしょうね。 〝人間力育成〟が急務  ──生き残りのカギは?  麻生 付加価値アップと低価格訴求が分岐点となります。そもそも製麺会社は麺作りの代行業ですから、指定品質と安定供給を踏まえた現行価格は適正なはずです。しかし、それらを無視して安値を要求する店が増えているのも事実。先ほど言った十両以下、つまり小規模の〝製麺所〟なら値下げをしても、何とかやっていけるでしょう。でも、多くの従業員を抱える〝製麺企業〟はそうはいきません。良質の商品をより安く提供することは大切ですが、企業としては価格以外の面で付加価値を付けていくことが、競争を勝ち抜くカギになります。その一つが研究開発力。新規開拓営業には新提案が不可欠。それができるか否か、各社の研究開発力にかかっています。〝食の安全〟の確保も重要です。衛生管理を徹底した工場設備が求められます。そしてなにより〝人間力〟が重要です。  ──人間力とは? 麻生 どんな繁盛店も、必ず壁にぶつかります。ラーメン店の店主は、独立心が強いだけに〝一匹狼〟的な人が多く、一人で悩みを抱えることも少なくない。そうした状況を敏感に察知して、親身になって相談に乗れる営業マンが必要なのです。それには経験に基づく確かな知識、リサーチ力、分析力、提案力、そして店主との信頼関係を築ける人間性が求められます。その人間力育成に向け日々努めています。 麻生氏による今後、業界をけん引するベスト3ラーメン ※写真はイメージ。麻生とは無関係です 1位 豚骨醤油 男性から圧倒的な支持を受ける。冬場はもちろんラーメンが敬遠されがちな夏場も、濃いめの味が受け入れられる。やや薄味の豚骨醤油ラーメンも人気。 2位 二郎系 ガッツリ系ラーメンの人気は20~30代の男子に根強い。消費税アップで値段が上がった分、麺量や具材が多く、オイリーで食べ応えのある二郎系はお得感がある。 3位 つけ麺 麺量はたとえば普通盛り240g、大盛り360g、特盛り480gを同価格で提供する店が支持されている。ランチタイムはライス無料にするなどのサービスも人気。スダチを添えて味に変化を出すなどの付加価値もポイント。 麻生 政雄(あそう・まさお) 1947年神奈川県平塚市出身。 麻生氏の母親が始めた製麺所をもとに47年、㈲麻生を設立し中華麺、ギョウザの皮の製造・卸を開始。90年、㈱麻生に社名変更し業務用食材の卸業務を強化。麻生氏は19歳から家業を手伝い、25歳から経営を指揮する。顧客のニーズに合ったオリジナル麺を開発し続ける。 ㈱麻生 本社所在地=神奈川県平塚市東豊田480─17/事業内容=(1)生麺、揚げ麺、皮(ギョウザ、ワンタン、シュウマイ)の製造(2)顧客PB商品の製造(3)業務用中華食材の卸業務あたらしい視点でラーメンを伝える情報誌!