使命は「ラーメンの価値」の向上

1994年に開業した「新横浜ラーメン博物館」は、ラーメン愛好家のみならず、幅広い層が足を運ぶエンターテインメント施設。独自の切り口でラーメンの最新情報を発信するとともに、業界への新たな提案も行っている。同館で営業戦略に携わる中野正博氏に、現在のラーメン業界の動向と、今後期待される展開について話を聞いた。


時代とともに激しく変遷する業界

──市場の現状は?
中野 ラーメンの市場規模を示すはっきりとしたデータはないのですが、一般的には2000~3000億円といわれています。
店舗数でいうと、いわゆる「専門店」は約4万軒。食堂や中華飯店、ファミレス、居酒屋などを含めた「ラーメンを提供する店」となると約20万軒。飲食店全体の約3分の1が何らかの形で、ラーメンを提供していると考えられます。
店舗数のピークは2002年。それ以降はなだらかに減少してここ数年は横ばい状態です。激戦区では入れ替わりが激しく、常時2~3割の店が閉店し、それとほぼ同数の店が出店しているというのが現状です。

──トレンドの変遷は?
中野 近年の流れでいうと、第一次ブームは1960年代後半の「どさん子」の味噌ラーメン。それから、1980年代になってTVや雑誌でグルメ特集が盛んになり、ラーメン店が次々にマスコミで取り上げられるようになりました。
1990年代に入ると、豚骨ラーメンが首都圏に進出し、人気が定着。1997~2001年頃までは、ご当地ラーメンブームでした。その後は店主の名前、店の名前が中心のご当人ラーメンの時代に。より強烈な個性が求められるようになりました。

 ──今後の潮流予想は?
 中野 外食・中食頻度の増加や食の欧米化に伴い「二郎系」のような濃い味、ガツンととがった個性を求める流れも続くとは思いますが、それとは別に、高齢化の影響などで、あっさりしたものの需要も高まるのではと思います。


客層の拡大と海外進出で業界活性化

──近年の傾向は?
 中野 以前は、ラーメンというと、「いわゆる外食」という特別なものではなく、「普段の生活の中で手軽に食べるもの」だったと思います。それが、この10年、他の外食に近い感覚で、ラーメン店に足を運ぶようになっている気がします。
こうした流れに伴って、私が顕著に感じるのは、来館者にファミリー層が増えてきたこと。これは他の路面店にも同様の現象がみられると思いますが、テーブル席が増え、滞在時間が長くなっています。
2000年に入った頃からファミレス・スタイルのラーメンチェーンが増えているのもその流れのひとつだと思います。

 ──女性客の嗜好は?
 中野 女性の好むラーメンというと、ヘルシー系の脂を極力使わない、ベジラーメンのようなものをイメージしますが、意外にそうでもない。現役大学生(男女とも)にラーメンの好みについて調査したところ、男性が好む一般的なラーメンが支持されました。
女性もチャーシューは大好きですし。ただし量は少なめ。具材のサイズも小さめでいろいろな具がちょこちょこのっているのが好まれるようです。

 ──海外では?
 中野 日本でラーメンというと、多くは店の滞在時間が20~30分のファストフード。これに対してNYでは1時間以上かけて、おつまみなどとともにゆっくり楽しむ食事という位置付けです。
また、NYの人々には行列に並ぶという感覚がないので、ウエーティングバーでお酒を飲みながら順番を待つという、一風堂さんのスタイルが好評です。


真のラーメンを追求する試みを

──若い店主への期待は?
 中野 作り手でない私が言うのはおこがましいですが、情報化社会と不況の影響から繁盛店の味をそのまま模倣する傾向が多いのは事実で、「自分はこの味だ!」という魂の入ったものに挑戦してほしいですね。

 ──今後の抱負は?
 中野 「日本のラーメン文化を海外に広める」というのも当館の設立目的のひとつ。アジアにはかなり浸透してきましたので、今後はヨーロッパにも力を入れていきたいです。
それから国内では、エンターテインメント施設としての、企画イベントはもちろん引き続き行っていきますが、それと並行して、本筋である「どうしたらラーメンの価値を伝えられるか」という根本のテーマに、少しずつでも取り組んでいかれたらと思っています。


中野 正博(なかの・まさひろ)

中野 正博(なかの・まさひろ)

1974年神戸生まれ。大学卒業後、留学したオーストラリアで外から見る日本の食の素晴らしさに感銘を受け、日本の食文化を世界に発信するべく、帰国後98年に㈱新横浜ラーメン博物館に入社。現在は同館の広報・宣伝の他、ラーメン店の調査・誘致・企画などを手掛けている。


ラミューズメント・ミュージアム 新横浜ラーメン博物館

ラミューズメント・ミュージアム 新横浜ラーメン博物館
ラーメンをテーマにした、フードアミューズメントパークの元祖。「飛行機に乗らずして全国銘店の味を味わおう」をコンセプトに館内には全国の人気店が集められ、現在9店舗が軒を並べる。また、ラーメンの歴史をはじめ、他では見ることのできない貴重な資料の展示、企画イベントも随時開催されている。1日の来場者数は、平日約1,800人、休日約4,000人。年間100万人が訪れる。来場者が食するラーメン、1人平均1.6杯。
ラーメン文化を幅広く支援

adminコラム使命は「ラーメンの価値」の向上 1994年に開業した「新横浜ラーメン博物館」は、ラーメン愛好家のみならず、幅広い層が足を運ぶエンターテインメント施設。独自の切り口でラーメンの最新情報を発信するとともに、業界への新たな提案も行っている。同館で営業戦略に携わる中野正博氏に、現在のラーメン業界の動向と、今後期待される展開について話を聞いた。 時代とともに激しく変遷する業界 ──市場の現状は? 中野 ラーメンの市場規模を示すはっきりとしたデータはないのですが、一般的には2000~3000億円といわれています。 店舗数でいうと、いわゆる「専門店」は約4万軒。食堂や中華飯店、ファミレス、居酒屋などを含めた「ラーメンを提供する店」となると約20万軒。飲食店全体の約3分の1が何らかの形で、ラーメンを提供していると考えられます。 店舗数のピークは2002年。それ以降はなだらかに減少してここ数年は横ばい状態です。激戦区では入れ替わりが激しく、常時2~3割の店が閉店し、それとほぼ同数の店が出店しているというのが現状です。 ──トレンドの変遷は? 中野 近年の流れでいうと、第一次ブームは1960年代後半の「どさん子」の味噌ラーメン。それから、1980年代になってTVや雑誌でグルメ特集が盛んになり、ラーメン店が次々にマスコミで取り上げられるようになりました。 1990年代に入ると、豚骨ラーメンが首都圏に進出し、人気が定着。1997~2001年頃までは、ご当地ラーメンブームでした。その後は店主の名前、店の名前が中心のご当人ラーメンの時代に。より強烈な個性が求められるようになりました。  ──今後の潮流予想は?  中野 外食・中食頻度の増加や食の欧米化に伴い「二郎系」のような濃い味、ガツンととがった個性を求める流れも続くとは思いますが、それとは別に、高齢化の影響などで、あっさりしたものの需要も高まるのではと思います。 客層の拡大と海外進出で業界活性化 ──近年の傾向は?  中野 以前は、ラーメンというと、「いわゆる外食」という特別なものではなく、「普段の生活の中で手軽に食べるもの」だったと思います。それが、この10年、他の外食に近い感覚で、ラーメン店に足を運ぶようになっている気がします。 こうした流れに伴って、私が顕著に感じるのは、来館者にファミリー層が増えてきたこと。これは他の路面店にも同様の現象がみられると思いますが、テーブル席が増え、滞在時間が長くなっています。 2000年に入った頃からファミレス・スタイルのラーメンチェーンが増えているのもその流れのひとつだと思います。  ──女性客の嗜好は?  中野 女性の好むラーメンというと、ヘルシー系の脂を極力使わない、ベジラーメンのようなものをイメージしますが、意外にそうでもない。現役大学生(男女とも)にラーメンの好みについて調査したところ、男性が好む一般的なラーメンが支持されました。 女性もチャーシューは大好きですし。ただし量は少なめ。具材のサイズも小さめでいろいろな具がちょこちょこのっているのが好まれるようです。  ──海外では?  中野 日本でラーメンというと、多くは店の滞在時間が20~30分のファストフード。これに対してNYでは1時間以上かけて、おつまみなどとともにゆっくり楽しむ食事という位置付けです。 また、NYの人々には行列に並ぶという感覚がないので、ウエーティングバーでお酒を飲みながら順番を待つという、一風堂さんのスタイルが好評です。 真のラーメンを追求する試みを ──若い店主への期待は?  中野 作り手でない私が言うのはおこがましいですが、情報化社会と不況の影響から繁盛店の味をそのまま模倣する傾向が多いのは事実で、「自分はこの味だ!」という魂の入ったものに挑戦してほしいですね。  ──今後の抱負は?  中野 「日本のラーメン文化を海外に広める」というのも当館の設立目的のひとつ。アジアにはかなり浸透してきましたので、今後はヨーロッパにも力を入れていきたいです。 それから国内では、エンターテインメント施設としての、企画イベントはもちろん引き続き行っていきますが、それと並行して、本筋である「どうしたらラーメンの価値を伝えられるか」という根本のテーマに、少しずつでも取り組んでいかれたらと思っています。 中野 正博(なかの・まさひろ) 1974年神戸生まれ。大学卒業後、留学したオーストラリアで外から見る日本の食の素晴らしさに感銘を受け、日本の食文化を世界に発信するべく、帰国後98年に㈱新横浜ラーメン博物館に入社。現在は同館の広報・宣伝の他、ラーメン店の調査・誘致・企画などを手掛けている。 ラミューズメント・ミュージアム 新横浜ラーメン博物館 ラミューズメント・ミュージアム 新横浜ラーメン博物館 ラーメンをテーマにした、フードアミューズメントパークの元祖。「飛行機に乗らずして全国銘店の味を味わおう」をコンセプトに館内には全国の人気店が集められ、現在9店舗が軒を並べる。また、ラーメンの歴史をはじめ、他では見ることのできない貴重な資料の展示、企画イベントも随時開催されている。1日の来場者数は、平日約1,800人、休日約4,000人。年間100万人が訪れる。来場者が食するラーメン、1人平均1.6杯。 ラーメン文化を幅広く支援あたらしい視点でラーメンを伝える情報誌!